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2021 年度 実施状況報告書

高校福祉科における体験的コミュニケーション理解促進プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K02546
研究機関愛知教育大学

研究代表者

佐野 真紀  愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40314067)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード高校福祉科 / 介護福祉士養成 / コミュニケーション / 共感 / 受容
研究実績の概要

本研究の目的は、介護福祉士養成を行う高校福祉科において、生徒が学校生活や介護実習において直面しているコミュニケーション上の困難さを明らかにし、介護福祉士版コミュニケーション体験的理解プログラムを構築することである。令和3年度においては、目標1「『他者の尊重』『共感』『共生』『受容』について、その意味内容がどのような意識の在り方によって行動に結び付くかについて、文献研究を通して検討する」について取り組んだ。
介護福祉領域の研究における共感概念の捉え方について文献を渉猟したところ、共感概念を明確に定義して研究を進めている論文は数少なく、参考としてソーシャルワーク領域まで広げて文献研究を進めた。介護福祉領域並びにソーシャルワーク領域において、共感概念の定義は心理学から引用されることが多く、Davis(1983)、角田(1991,1998)の共感尺度を用いて調査研究を行っているものが複数見られた。Davisをはじめとして、心理学においては共感を他者理解の基礎となる認知的・情動的構成概念としてとらえていることが多いが、多様な共感の在り方として3つの側面(認知的共感/メンタライジング、情動的共感/体験共有、動機的共感/共感的配慮)からとらえる立場もある。(Zaki,2019)
Zakiは共感研究を概観しながら、共感のon/offを選択していること、共感はトレーニングで強化できること、ケアギバーが陥りやすい共感疲労を避けるためには共感的配慮を持つことが有効であること、セルフコンパッションやマインドフルネスが共感する力を高めることに役立つことなどを示している。加えて「他者の尊重」「共生」等の概念は共感の研究の中で検証されていること、共感的配慮の内容は介護福祉士養成テキストなどで示されている「受容」に近いことから、共感を鍵概念としてこれらの概念を関連付けて理解することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初の計画では、令和3年度は目標1、目標2、目標3について取り組む予定であった。目標1については文献研究が中心であり、文献の渉猟については概ね計画通りに進めることができた。しかし、コミュニケーション体験的理解プログラムを構築するためにアドバイスをいただく予定だった方が令和3年度12月に急逝されたため、当初想定していたディスカッションを行うことができていない。この点については今後補っていきたい。
また、目標2、目標3については、新型コロナウイルス感染症の拡大により、授業日程が過密になっていること、高校福祉科の生徒が介護福祉実習を例年通り行うことができないこと等があり、計画通りに進めることができなかった。具体的には、令和2年度の実習が例年とは異なる形になったこと、令和3年度の実習の時期が定まらなかったこと、受け入れ先によって実習内容に偏りがあり、利用者と関わることができない生徒もいたために生徒の実習体験が一定でなかったことがあり、調査は困難と判断した。実習内容が限定的になっていることは令和4年度においても影響が残ると推測されるため、今後は生徒の実習体験についてどのように把握するかを含めて調査内容を検討しながら、慎重に実施時期を見極めたい。

今後の研究の推進方策

令和4年度は、令和3年度に実施できなかった目標2(高校福祉科の生徒がどのように「共感」「他者の尊重」「共生」「受容」をとらえているかを明らかにする)、目標3(現在高校福祉科に在学している生徒を対象に、学校生活並びに実習場面においてどのようなコミュニケーションの困難さに直面しているかを明らかにする)を中心に取り組む予定である。その際、以下の点に留意しながら研究を進めていく。
調査票の作成-調査票の内容は、高校生の共感概念の理解についての質問、学校生活や実習においてのコミュニケーション経験についての質問、高校生の共感性を問う質問を想定している。ところで、令和3年度に実施された介護福祉実習の内容を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響により、実習施設(特に特別養護老人ホーム)によって実習内容が大きく異なり、利用者と直接関わることのできない生徒もいたとのことである。このことから目標3については、当初想定していたような調査ができない可能性がある。令和4年度の高校福祉科の介護福祉実習がどのような形で実施されるかを見極めながら、調査項目に実習に関する内容を含むか否か、どのような形の質問にするか、どのような分析を行うかを見極めたい。
調査時期の設定―調査の実施時期については、新型コロナウイルス感染症の影響を見極めつつ、高校福祉科教員と相談の上決定していく。また、計画作成当初はアンケート1、2で分けていたが、質問内容によってはアンケート1と2を一つの質問紙にして行うことも検討する。

次年度使用額が生じた理由

令和3年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、授業日程が過密になっていること、高校福祉科の生徒が介護福祉実習を例年通りの内容で行うことができないこと等があり、調査を行うことができなかった。調査内容の再検討が必要であり、当初は初年度に購入する予定となっていたテキストマイニングソフトの購入、ワークショップで使用する画材などの購入を控えた。今後、調査内容と分析方法について再検討を進め、適切なソフトを購入したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 介護福祉士養成における共感概念についての一考察2022

    • 著者名/発表者名
      佐野真紀
    • 雑誌名

      障害者教育・福祉学研究

      巻: 18 ページ: 97-102

    • オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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