研究課題/領域番号 |
21K02546
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
佐野 真紀 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40314067)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共感 / コミュニケーション / 介護福祉士養成 / 高校福祉科 / 介護福祉士 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護福祉士養成を行う高校福祉科において、生徒が学校生活や介護実習において直面しているコミュニケーション上の困難さを明らかにし、介護福祉士版コミュニケーション体験的理解プログラムを構築することである。 令和4年度は、目標2、目標3の実施に向けたパイロット調査として、大学1年生に対して「体験的コミュニケーション理解プログラム」を実施し、自由記述のアンケート調査を行った。これによりプログラムが参加者にどのような体験をもたらしているかを明らかにすることを目的とした。さらにその体験が共感概念に結び付く体験になっているかについてZaki(=2021)に示されている共感の定義に基づいて検討した。調査対象者は入学から7か月経過後の大学1年生20名、ソーシャルワーク演習Ⅰの授業の一環としてプログラムを実施し、事後アンケートを依頼した。山浦(2018)による質的統合法に基づいて分析を行った。 このプログラムは参加者に対して、他者が【自分と違う】世界を感じていることや【表現の違い】を知り、{自他の違いへの気づき}体験と、それに対する{肯定的反応}をもたらしていた。さらに自分と他者の絵を重ねて眺めることで【見え方の変化】を体験した。このことが影響を与えて、自分と他者が【違っていていい】と肯定することから、コミュニケーションに大切な【共感のための姿勢】や【違いを受け入れる】姿勢、【内側を見つめる】態度に気づくことをもたらしていたと言える。これらの体験を共感概念に照らし合わせると、共感的配慮やコンパッションに繋がる姿勢を見ることができ、さらに、【共感のための姿勢】に分類されているコードには認知的共感に相当すると考えられた。以上のことから、「体験的コミュニケーション理解プログラム」によってもたらされる経験は、違いを意識することから出発しながら、共感についての気づきをもたらしていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年には目標1,目標2,目標3について取り組む予定であったが、研究協力者の急逝と新型コロナウイルス感染症の影響で実習が行われないことなどにより、目標1に取り組むにとどまった。令和4年には目標2(高校福祉科の生徒がどのように「共感」「他者の尊重」「共生」「受容」をとらえているかを明らかにする)、目標3(現在高校福祉科に在学している生徒を対象に、学校生活並びに実習場面においてどのようなコミュニケーションの困難さに直面しているかを明らかにする)を中心に取り組む計画であった。 特に目標2についてアンケート調査を行うためにパイロット調査を行ったが、思わしい結果が得られず、調査票の項目を引き続き検討している。目標3については、新型コロナウイルス感染症の影響により、各学年の生徒の実習内容に差があることがわかり、当初の予定通りに調査を行う事は難しいと判断した。 当初計画で令和4年度に取り組む予定であった目標4(概念を体験として再構築するワークを検討し,介護福祉士版コミュニケーション体験的理解プログラムを作成する),目標5( 介護福祉士版コミュニケーション体験的理解プログラム試行し,プログラム評価を行い,プログラムを修正の上完成させる。目標2,3で明らかになった結果を基に,プログラム評価のための指標を作成する。プログラムを試行し,プログラム評価を行う),目標6(介護福祉士版コミュニケーション体験的理解プログラムを実施し,プログラム評価を行う。愛知県内の高校福祉科2校において,目標2で選定した学年の生徒に対してプログラムを実施し,プログラム評価を行う)については、コミュニケーション体験的理解プログラムを用いたパイロット調査を行うにとどまっており、プログラム評価の調査項目を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の当初計画では、目標4,5,6について取り組む予定であった。令和3年度に目標2,3に取り組めなかったことによって、目標4,5,6の取り組みに遅れが生じている。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、高校生が取り組む実習内容に差が生じていることから、当初の計画のように学年縦断的に体験を比較することは難しいと考えられる。 従って、目標2についての調査を行うにとどめ、目標4,5,6については既存のプログラムを修正する形で取り組み、高校生に向けて実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に遅れが生じ、調査の実施と体験的理解プログラムの実施ができなかったため。令和5年度に調査とプログラムの実施を予定しており、プログラム実施に必要な備品とデータ分析に必要なソフトの購入を予定している。
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