数学教育学におけるプラトニズムが後退し,数学的知識が人間による創造物と位置づけられる現在において,学習者や教師の情意的性格はますます重要視されるようになっている。コモグニション論におけるメタディスコースが情意的性格をとり得ることを示したことは,認知とコミュニケーションを統合する視点によって,数学教育で生ずる現象の大部分を説明する可能性を示したことになる。この成果によって,算数数学授業を巡るメタディスコースのさまざまな収集により,その異文化間の差異に焦点を当て,数学的知識が真に文化に依存した多様な知識であり,数学授業や学習も文化に依存する立場を強く支えることになる。
|