研究課題/領域番号 |
21K02963
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 共子 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (40227153)
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研究分担者 |
李 正姫 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (10747984)
迫 こゆり 岡山大学, 社会文化科学研究科, 客員研究員 (30866819)
奥西 有理 岡山理科大学, 教育学部, 教授 (50448156)
高浜 愛 順天堂大学, 国際教養学部, 講師 (90444645)
趙 師哲 山口大学, 教育・学生支援機構, 助教 (90783366)
中野 祥子 山口大学, 教育・学生支援機構, 講師 (90803247)
畠中 香織 関西医科大学, 看護学部, 講師 (40756227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 異文化間ソーシャルスキル / 日本人留学生 / 在日留学生 / 異文化適応 / ソーシャルスキル学習 / 異文化間教育 / 逆カルチャーショック / 文化 |
研究実績の概要 |
コロナ禍により我々は、世界が小国や未詳の地域を含めてくまなく繋がり協働が不可欠という現実に直面した。だが留学交流は滞りグローバル人材の育成は打撃を被った。コロナ後に世界の往来を回復し加速させる準備に貢献したい。本研究では、多様な文化圏を対象に有用なソーシャルスキルを抽出してその獲得方法を探り、留学生の異文化適応支援へ繋げようと発想した。異文化間ソーシャルスキル学習を、新たな心理教育的なカルチャーショック予防策として開発する、基礎から応用の研究を実施する。従来、世界の往来は増えてもカルチャーショック対策は経験任せで、心理学の社会貢献が待たれる。我々は文化差という社会心理学の主題に臨床心理学のスキル学習を重ね、学際研究の陣容で先遣例から適応支援策を導く方法論を開拓する。文化の心理学研究に、欧米主要国の文化的文脈とは異なる視点を導入して、異文化適応理論のユニバーサル化を前進させることを目指す。実践面では、コロナ後の世界の再構築に向けて、留学フロンティア地域を含む多文化をレパートリーに携えて、多極化した世界を行動しうる人材の輩出を前進させる。本年度はフランス、中国、アフリカ、ムスリムなどに焦点を当て、日本文化との邂逅や往来に関する成果を発表した。在仏日本人留学生の異文化間ソーシャルスキルを抽出し、在日中国人の文化行動のスイッチングから異文化間ソーシャルスキルの社会的機能を探り、在日留学生の文化間距離と異文化適応、日本人留学経験者の異文化間ソーシャルスキルの変容、日本人学生によるムスリムの受容などの成果を公表した。実践研究としては、在日留学生への異文化間ソーシャルスキル学習の実験的検討を報告し、日本人学生への異文化間ソーシャルスキル学習を含む異文化心理学の書籍を刊行し、事典や書籍に関連内容を執筆した。異文化間ソーシャルスキル研究の最前線を総括した書籍の次年度刊行に向けて準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様な研究を進展させることができた。実渡航には制限があるため、現地調査や多数を対象とした調査には限界があるが、ウエブによる国内外の調査を取り入れ、少数例を対象とした質的研究を深め、帰国者の体験や変容に焦点を当てた調査を推進した。柔軟に調査の主題と方法を調整することで、総合的に進捗を図っている。予定した全ての対象地域をカバーするには時間を要するが、社会的活動の回復にあわせて、これからの進行を計画している。実践研究への展開と教育応用については、開拓できたフィールドにおいて実践的な試行を重ね経験を積んできたが、更に効果検証とセッションの改良を進めていく予定である。知見の社会発信が進んでおり、異文化間心理学のテキストの刊行、留学生の健康管理に関する専門書の分担執筆、異文化間の事典への異文化間ソーシャルスキルの項目執筆などを通じて成果が広く公表され、本研究の視点の浸透を図ることができた。次年度は更に経年の成果を総括する書籍を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
日本と多文化圏との邂逅と往来に焦点を当て、各調査地域に関する総合的な異文化適応研究を進める中で、異文化間ソーシャルスキルの心理的機能を位置づける研究を多角的に展開していく。各地域に滞在する在外邦人の困難と対処を基にした異文化間ソーシャルスキルの探索とホストによる評価を重ねて、異文化間ソーシャルスキルの抽出を進める。異文化間ソーシャルスキルと異文化適応との関わりを読み解く基礎的な研究を進め、文化特異性を文化行動の観点から組み込んだ異文化適応の機序解明を目指す。新たな調査地域としてミャンマーなどを予定している。応用面では、実験室において構造化された課題を用いた実験的セッションを試行し、ソーシャルスキル学習の効果検証を行って、学習の実験的検討に関する結果報告を進める。実践研究としては、教育プログラムに異文化間ソーシャルスキルを組み込んだ異文化間教育を提案してきたが、今年度刊行した書籍を活用してその普及を働きかけていく。異文化間教育の枠組みとしてAUC-GS学習モデルを想定しているが、その実証的な知見を蓄積していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への参加形態がオンラインになったことなどで、旅費に余裕ができたが、コロナ禍の状況が好転するとみられる次年度以降に執行する予定。
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