現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1)対象者の社会的要因(帰住先、職業)、 個人的要因(性別、能力、病歴)、薬物自体の要因(使用歴、使用薬物の種類)等が、動機づけ向上に寄与する程度を明らかにすること、2)上記要因が、薬物使用行動の代替行動の獲得・実行もしくは環境の変化に寄与する程度を明らかにすることであった。この2つの目的のための データ収集は開始しており、現時点ではプログラム対象者の138名の内94名から研究に対する同意を得ている。そのうち、約2ヶ月半から3ヶ月で行われるコアプログラム前後のS-8Dのデータを取得できたのは80名である。上記の各種の要因についても、研究に同意したデータの蓄積は令和4年度にプログラムを開始する者の1年後のフォローアップまで行われ、分析に必要なデータ数は確保できると考えられる。現時点では順調に研究のプロセスは進行している。しかし新型コロナウィルスの感染状況による保護観察所の処遇方法の変更が生じたため、反転学習の効果、集団療法的関わりの効果、集団処遇と個別処遇に分けた分析については、データ取得と分析を中止している。本研究の主な目的であるS-8Dの得点変化と代替行動の獲得・環境の変化に関して、保護要因とリスク要因についての算出に必要なデータ蓄積は順調であり、代替行動の獲得・環境の変化の調査も対象者のプログラム受講から1年後より開始している。 予備的な分析の結果、動機づけに関する得点のうち「実行」因子得点はコアプログラム前後で上昇した(t(79)=3.01, p<.01)ことが確認された一方、プログラム前の「病識」得点は再発の低リスク群に影響しておらず、むしろ再犯群・高リスク群で高いこと(t(20)=2.43, p<.05)、低リスク群が「病識」得点を低下させること(F(2,28)=7.33, p<.01, effectsize f=.72)も明らかになった。
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