現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1)対象者の社会的要因(帰住先、職業)、 個人的要因(性別、能力、病歴)、薬物自体の要因(使用歴、使用薬物の種類)等が、動機づけ向上に寄与する程度を明らかにすること、2)上記要因が、薬物使用行動の代替行動の獲得・実行もしくは環境の変化に寄与する程度を明らかにすることであった。この2つの目的のためのデータ収集は一部のデモグラフィック項目を除いて概ね完了しており、調査依頼が可能であったプログラム対象者143名の内96名から研究に対する同意を得ている。そのうち、1年後のS-8Dの自己評価と代替行動の獲得・環境の変化のスタッフ評価が得られた対象者も37名に上り、一定の分析が可能になった。データ収集期間は終了しており、研究のプロセスは順調に進行したと言える。しかし新型コロナウィルスの感染状況による保護観察所の処遇方法に変更が生じており、反転学習、集団療法的関わりの効果、集団処遇と個別処遇の比較については、データ取得を中止している。 以下に予備的な分析の結果の一部を示す。全体的な動機づけのS-8D得点はコアプログラム前後で変化しなかった t(84)= 0.49, n.s.。強い影響ではないものの、コアプログラム前後で動機づけが低下した側面は、「病識」t(89)=2.04, p<.05と「迷い」t(86)=2.57, p<.05であった。一方で「実行」t(87)= 3.00、p<.01は上昇した。1年後にはコアプログラム前後と比べてS-8D得点は大幅に低下するF(2.64)=4.20, p<.01。下位因子では「病識」と「葛藤」がコアプログラム前と1年度の間で低下したF(2.70)=4.67, p<.01、F(2.70)=3.37, p<.01。一方「実行」については、動機づけの向上も見られなかったが、1年後に低下することもなかったF(2.68)=1.98, n.s.。
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