研究課題/領域番号 |
21K03117
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
村松 朋子 花園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20633118)
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研究分担者 |
神原 憲治 香川大学, 医学部, 教授 (90440990)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アセスメント / バイオフィードバック / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
本課題では、認知の修正を目指すCBTを『トップダウン介入』とし、身体症状を生理指標で可視化し、それを手がかりにPTSDに取り組む介入を『ボトムアップ介入』と定義した。PTSDへの介入方法は、持続エクスポージャー法(PE)を用いた。すなわち、身体症状に焦点を当てるバイオフィードバック 法をPE療法と組み合わせ、より有効性の高いPTSD治療法を検討する。 一般に健常人の呼吸性洞性不整脈は、安静時には振幅が大きく、興奮やストレス時には振幅が小さくなる。PTSD患者は、トラウマが未解決状態ではそのストレスのため、呼吸性洞性不整脈の振幅は低下していると想定される。そこで、PEセッション中に心拍と呼吸をリアルタイムに計測する。そして、自身の身体感覚の気づきと緊張状態の自己制御について学んでもらう。この過程により、自分の緊張状態を客観的に知ることを学び、次にトラウマに対する調整不能感を改善させ、『コントロール不能』という思いを『コントロール可能』という自信に転換するよう促すよう試みている。 現在、取得できたデータからは、トラウマ治療において、トラウマに関する記憶を呼び起こしている際、同時に生理指標を取得すると、アンダーエンゲージメントの状態とオーバーエンゲージメントの状態で示される生理指標の数値の変化が見られた。トラウマの記憶を呼び起こしている時のクライエントの状態について、治療者の観察からだけでなく、生理指標のデータで確認できることでより正確にクライアントの状態を把握できるようになる可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究機関の変更により、研究体制の構築に時間を要している。 研究協力者のリクルートが困難になったことが研究の遂行が遅れている1番の要因となっている。 そのため、新たなデータの収集には至らなかったが、これまでに取得したデータについて分析を進め、成果の一部を発表した。今年度は、研究体制を確立し、できる限りデータを増やすこと、得られたデータについて積極的に公開していくことを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
新たなデータ収集を可能にするため、医療機関などの研究協力機関とこれまで以上に連携し課題遂行に努めていく。 研究協力機関を新たに増やすため、研究対象者をPTSDのみに限らず、不安症まで広げて、心身相関に基づくバイオフィードバックと認知行動療法の併用についての効果に関して検討を進めていく。 既に取得済みのデータについての分析を進めることと並行して新たに取得したデータも加え積極的に成果を公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1に、研究協力者のリクルートが計画通りに進まなかったため、それにかかる費用がかからなかったこと、第2に、先に述べた理由により、データ解析や国際紙に投稿するための経費がかからなかったためである。 次年度は、国際学会での発表と国際紙への投稿を計画している。
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