研究課題/領域番号 |
21K03331
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山岡 直人 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90433789)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 賃金方程式 / レプリケータ方程式 / 数値シミュレーション / 差分方程式系 / カオス / 周期解 / 可視化 / 人口集中 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする空間経済モデルは、レプリケータ方程式に賃金方程式を組み込んだ非線形微分積分方程式系である。本年度は、時間遅れをもたない空間経済モデルに対して、空間と時間を離散的に扱って研究を進めた。
まずは、この空間モデルの中にあるパラメータの特徴をつかむため、128地域などの多地域の空間離散モデルに対して、解の漸近挙動を数値シミュレーションによって可視化した。それによって、初期の工業労働者人口密度を正規分布の密度関数としたとき、工業労働者が複数地域に集まることを確認した。この人口集中現象を数学的に解析するために、2地域かつ時間離散とした差分方程式系に限定して考察した。この差分方程式系の数値シミュレーションによって、モデルに組み込まれている輸送費のパラメータが地域の人口集中に影響を与えることが分かった。この事実を踏まえ、以下(1)から(4)の数学解析および数値計算を行った。
(1)賃金方程式の解の存在性と一意性が保障されるための十分条件を与えた。(2)時間ステップサイズや輸送費が小さい場合、差分方程式系の解である工業労働人口密度が時間発展しても一定の値に保存されるための十分条件を与えた。(3)差分方程式系の初期値問題を考察し、時間発展と共に解が一つの地域に集中するための十分条件を与えた。(4)差分方程式系の初期値問題に対して、ステップサイズや輸送費のパラメータを大きくすると、ロジスティック方程式のように、周期的な解やカオス的に振る舞う解の出現を数値計算によって確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
時間遅れをもたない2地域の空間経済モデルに対して、いくつか研究成果を得ることができたが、当初計画していたところまで研究が進まなかった。当初の計画では、研究初年度は、多地域の空間離散モデルに対しても数学解析を行う予定であった。しかし、地域を2つに限定しても分岐現象や初期値鋭敏性など、同モデルには様々な数学的性質が潜んでおり、想像してたより解析が難しかった。また、研究成果を研究集会や学会で発表することはできたが、論文投稿には至っていないので、早急にまとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で扱う空間経済モデルは、2地域に限定しても数学的な問題が山積している。そのため、しばらく、2地域モデルを中心に研究を進める。詳細は以下の通り:
(1)2地域に工業労働者が留まるための十分条件を与える。(2)数値シミュレーション結果によると、工業労働者が1地域に集中するか2地域にとどるかは、初期値に依存する可能性もある。このような十分条件を数学的に与えることができるかどうか検討する。(3)工業労働者が1地域に集中するための十分条件は与えることができたが、数値シミュレーション結果と比較すると、十分すぎる条件しか与えられていないので、この条件を改良する。(4)レプリケータ方程式を連続的に扱い、差分方程式モデルと同様のことが数学的に証明できるかどうか確かめる。(5)多地域モデルにおいて工業労働人口密度を既知関数としたときに、賃金方程式の解の存在と一意性が保障できる十分条件を与える。(6)多地域モデルにおいて、賃金を既知関数としたときに、レプリケータ方程式の解の挙動を調べる。(7)時間遅れをもつ空間経済モデルの解の漸近挙動を調べるために、数値シミュレーションできるアルゴリズムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度は、2地域の空間経済モデルを中心に研究を進めたので、ワークステーションを新たに購入する必要がなかった。次年度以降の研究において、多地域の空間経済モデルを解析する際に、ワークステーションを購入し、数値シミュレーションを円滑に行う。
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