研究課題/領域番号 |
21K03436
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
内野 瞬 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (80617465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 冷却原子気体 / 量子輸送 |
研究実績の概要 |
冷却原子気体を用いることで実現される非自明な量子輸送現象を明らかにすべく研究を行なった。今年度は、磁性不純物に由来するメゾスコピック輸送、ボース・アインシュタイン凝縮体におけるジョセフソンカレント、光学スピン伝導率に関する研究で成果を得ることができた。磁性不純物に由来するメゾスコピック輸送の研究では、京都大学と東京工業大学のグループとの共同研究を行なった。そして、軌道自由度のあるYb原子系で、不純物由来のスピン緩和現象を観測し、それがLandauer公式によって記述されることも明らかとなった。ボース・アインシュタイン凝縮体におけるジョセフソンカレントの研究では、トンネルハミルトニアン法とケルディッシュ形式を用いることで、非線形応答領域まで適用可能なDCジョセフソンカレントの表式を得た。その結果、非線形応答領域において、超伝導体のDCジョセフソンカレントとは大きく異なる輸送特性が得られることを明らかにした。光学スピン伝導率に関する研究では、東京大学と理化学研究所のグループとの共同研究を行なった。我々は、現在投稿中の光学スピン伝導率の論文を1次元p波超流動体に適用した。我々はまず、このような系が弱結合領域においてクラスBDIで記述されるトポロジカル超流動体になることを示し、原子間相互作用の大きさを変化させることで、トポロジカル転移が生じることを示した。さらに、このトポロジカル転移が光学スピン伝導率測定によって特徴付けられることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように令和3年度において実施した「磁性不純物に由来するメゾスコピック輸送の研究」、「ボース・アインシュタイン凝縮体におけるジョセフソンカレントの研究」及び「光学スピン伝導率に関する研究」という、3つの全く異なる研究で、それぞれが研究成果が得られたのが大きい。「磁性不純物に由来するメゾスコピック輸送の研究」の成果はNature Communications誌に、「ボース・アインシュタイン凝縮体におけるジョセフソンカレントの研究」の成果はPhysical Review Research誌に、「光学スピン伝導率に関する研究」の成果はPhysical Review B誌に論文として掲載された。これら出版済みの成果に加え、現在、投稿中の論文も4本あり、令和3年度は、研究が大きく進んだ年であったことから当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、現在投稿中である「光学スピン伝導率の測定の提案」、「光共振器中で強く相互作用する冷却フェルミ原子気体における光双安定性の研究」、「弱く相互作用するボース・アインシュタイン凝縮体を用いた超流動・ノーマル接合における輸送特性の研究」、「非線形rf輸送を介したアンドレーエフ反射の研究」に関する論文をvisibilityの高い雑誌に出版させることを優先に取り組んでいきたいと考えている。加えて今後は、光学スピン伝導率を用いた系の特徴付けに関する研究や、原子の内部自由度を利用した人工次元間の輸送問題に関する研究を中心に推進していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、当初計画で予定していた国内外の出張を行うことができなかったため、出張に係る費用を中心に次年度使用額として生じることとなった。次年度使用額は主に、次年度分研究費と合わせて、国内外の出張に係る費用や成果発表に係る費用として使用する予定である。
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