研究課題/領域番号 |
21K03452
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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研究分担者 |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 准教授 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖分子センサー / スピン拡散 / NMR / μSR |
研究実績の概要 |
ナノサイズの金微粒子表面に、ボロン酸分子とルテニウム錯体を修飾した糖分子認識センサーは、ATPやバクテリアなど幅広い対象に適用できることからデバイス化が期待されている。本研究のゴールは、糖認識部位のボロン酸分子の電子状態が、センサーを構築する各パーツ間の界面を経て電極まで伝達される、その微視的機構を明らかにすることである。本年度の研究内容は以下の二つであった。 1.デバイスの基礎物性測定による微粒子上の分子密度最適解を探索する 2.金ナノ粒子と金属錯体を結ぶ一次元鎖上の電子伝達チャネルの性質をμSR(英国)で調べる その結果、1.については、ボロン酸分子上の11B核NMRから、B0-Ru0分子間距離を推定し、金微粒子表面密度を評価した。分子間距離は7Åと求められ、これは分子サイズから計算した細密充填パックモデルと同程度であることが分かった。 また、2.については、英国のラザフォードアップルトン研究所に試料を送付しμSR測定を行った。この結果に対し、1H-NMR-T1の測定結果とスケールして磁場依存性を調べた結果、高磁場ほど緩和が遅くなる、1/√H型の磁場依存性が顕著に見られた。これは一次元スピン拡散が存在する場合の磁場依存性そのものであり,糖認識したボロン酸の電子状態の変化が,アルキル鎖上を伝達している可能性を強く示唆している。 以上より、センサー分子のナノ粒子上での集積、両者を結ぶ一次元鎖上のスピン伝達、と言う二つの知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二つの主要手法であった、NMRとμSRの実験を敢行し、特に、後者はコロナ下ではあったが、英国施設にて測定を行うことが出来た。 その結果、上記にある通り、二つの主要な結果を得ることが出来た。 以上により、おおむね順調に進展、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでで、分子センサーの金属ナノ粒子上への集積の度合いと、両者をつなぐアルキル鎖上のスピン拡散について、知見が得られた。次のステップは、糖認識による電子状態の変化をNMRによって直接検証することである。以下の二点を主眼として研究を進めて行く。 1.まず、センサー部位(ボロン酸)の、電子状態が変化しているかどうかを、11B-NMR(スペクトル・T1)によって、変化をダイレクトに捉える。 2.金属ナノ粒子のNMRによって、センサー部位からの伝達があるかどうかを調べる。これについては、銅・金のコアシェル型ナノ粒子を作製し、Cu-NMRを用いて調べる。 コアシェル型でない、金ナノ粒子についてもNMRの検出を目指す。
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