研究実績の概要 |
本研究ではこれまでの摂動論的アプローチでの解析が困難であった強結合超対称ゲージ理論, ゲージ重力対応, 量子力学系を調べる新しい 研究方法として, 量子周期に着目する。 特に常微分方程式と量子可積分模型の対応(ODE/IM対応)を用いて, 量子周期の非摂動的な構造を明らかにする。さらにゲージ理論の強結合スケール極限 で実現される超共形場理論 (Argyres-Douglas 理論) の量子周期と量子可積分系の対応を明らかにすることにより, 強結合領域における超対称ゲージ理論のダイナミクスを理解することを目的としている。今年度はこれまで理解がされていなかった高階常微分方程式のWKB解析と量子可積分系の関係を通じて, 対応するArgyres-Douglas理論の量子周期の物理特にその壁越え(Wall-crossing)現象を定式化することに成功し, さらにArgyres-Douglas理論の間の非自明な対応を見出した。 まず多項式型のポテンシャル項を持つ 3階常微分方程式のWKB周期と量子可積分模型の対応を調べた。これは(A2,AN)型Argyres-Douglas理論のNekrasov-Shatashvili極限における量子Seiberg-Witten曲線と見做される。その真空をパラメトライズするモジュライ空間はモノポール等のBPS粒子の種類によりいくつかのchamberに分割され, BPS粒子の質量はその量子周期の絶対値で表される。本研究ではminmal chamberにおける量子周期が量子可積分模型における(A2,AN)型のY関数であることを導き, さらにそのY関数の満たす積分方程式(TBA方程式)を導いた。さらにそのTBA方程式をwall-crossingにより他のchamberに拡張することにより, 新しいTBA方程式を構成した。特に(A2,A2)型の場合maximal chamberにおいて(D4,A1)型のAD理論が現れること, (A2,A3)の場合(E6,A1)理論が現れる事を発見し, AD理論間の非自明な対応を見出した。
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