研究課題
量子重力理論の無矛盾性は、その定義自身が数学的に well-defined ではないので確固とした答えを出すことが難しい。しかし、双対な共形場理論の無矛盾性と読み替えることができれば、漸近的に反ドジッター時空上での量子重力理論の無矛盾性を well-defined に定式化することができる。本研究では、この定式化の下で、共形場理論の手法を用いて無矛盾な量子重力理における物質やその間に働く力の制限を議論する。例えば、「弱い重力予想」と呼ばれる「無矛盾な量子重力理論において重力は電磁気より力が弱い」という命題を「演算子積展開係数の間に、演算子の共形次元と電荷に依存する不等式が存在する」と双対な共形場理論の命題に翻訳し、それの当否を調べる。具体的には共形ブートストラップ方程式などの共形場理論の無矛盾性に立脚する手法を使う。さらに、量子重力理論の無矛盾性を表現していると考えられる他の予想も、共形場理論の命題として書き直してその当否を検討する。これによって、共形場理論で成立する命題から、量子重力理論の性質を導き、その本質をより深く理解できるようになる。本年度は高次元共形場理論の数学的な基礎となる共形ブロックの数理的構造を調べ、その漸化関係式が超幾何関数の数理と結びついていることを示した。また、ブートストラップの方法を量子力学系やミクロカノニカル分布を持つ統計系に適用してその応用可能性を議論した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は高次元共形場理論の数学的な基礎となる共形ブロックの数理的構造を調べ、その漸化関係式が超幾何関数の数理と結びついていることを示した。また、ブートストラップの方法を量子力学系やミクロカノニカル分布を持つ統計系に適用してその応用可能性を議論した。このように、本年度は研究課題の基礎となる数理的な足固めができ、これからの応用が期待できる。
今後は研究の本命である量子重力理論に共形場理論の方法を直接適用し、既存の方法では得られなかった新しい制限などを求めていく。また、それと並行して周辺分野への応用も考えていきたい。
新型コロナウィルスにより予定した国内出張・海外出張が難しくなったため、次年度以降に予定を変更した。次年度の出張費を増額し、また計算機環境の整備・拡充により多く使用することを計画している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
International Journal of Modern Physics A
巻: 36 ページ: 2150176~2150176
10.1142/S0217751X21501761
Modern Physics Letters A
巻: 36 ページ: -
10.1142/S0217732321502722