研究課題/領域番号 |
21K03615
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
信川 正順 奈良教育大学, 理科教育講座, 准教授 (00612582)
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研究分担者 |
内山 秀樹 静岡大学, 教育学部, 准教授 (50708435)
山内 茂雄 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60260410)
信川 久実子 近畿大学, 理工学部, 講師 (60815687)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | X線天文衛星 XRISM / 銀河系中心 / 高温プラズマ / 超新星残骸 / データ較正 |
研究実績の概要 |
銀河系には点源に分解されていないX線放射が広がっている。これを銀河系拡散X線放射(GDXE)と呼ぶ。これまでの研究により GDXE には空間的に銀河系中心に集中する成分とさらに銀河円盤にまで広がる成分、銀河ハロー部に広がる成分の3成分が存在することがわかってきた。本研究課題では銀河系中心部の成分に着目し、新たなX線天文衛星 XRISM による観測で、その起源を明らかにする。 XRISM の打ち上げは予定より1年遅れの2023年9月になり、観測予定が大幅にずれてしまった。2024年3月に予定していた銀河系中心の観測の一部を実施し、残りは2024年8月以降になる予定である。そこで2023年度は XRISM による観測データ解析の準備した。XRISM の観測装置の1つであるXtend のデータ較正について、地上試験データを用いた方法の改善と確立を行なった。その結果、従来よりも良い精度でデータ較正の実現を実証した。XRISM の観測を実施し、その地上データ処理を行い、信頼性のある解析データの準備を行なった。 また、他X線観測データを用いた観測研究を実施した。X線天文衛星「すざく」のデータを用いて、GDXE スペクトルを詳細解析した。その結果、銀河系中心だけでなく、銀河円盤部、ハロー部はいずれも暗いX線星成分の重ね合わせに加えて、真に広がったプラズマ成分も存在する可能性を示した。 さらに、広がったプラズマ成分の起源の候補として、超新星残骸に伴う高温プラズマの観測も進めた。「すざく」観測データを用いて、超新星残骸W49BとG352.7-0.1を調査した。W49Bからは高階電離した鉄イオンに関連すると思われる微弱輝線の存在を指摘し、それが周囲の星間物質との相互作用に由来する可能性を指摘した。G352.7-0.1のデータから重元素の輝線を検出し、その爆発起源を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
XRISM の打ち上げが当初の予定より1年ほど遅れたため、本研究課題は2023年度までの予定であったが、2024年度に延長した。2023年9月7日に X線天文衛星 XRISM の打ち上げは成功した。その後、軌道上で観測準備が整い、10月から観測を開始した。本研究課題の観測対象である銀河系中心は観測できる時期が限られているため、予定の一部を2024年3-4月に実施した。残りは2024年8月以降に観測予定である。これまでに軌道上データの較正と品質の確認を行い、2024年4月に観測データの科学解析ができる状態に移行した。並行して、「すざく」の観測データを用いて、銀河系中心のスペクトル解析を進めた。その結果、GDXEをX線星成分と広がったプラズマ成分で再現するモデル化の方法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
XRISM は予定以上の性能であることを確認しており、本研究課題は十分に達成できる見込みである。XRISM のデータが十分に得られた後に、「すざく」のデータにより得られたGDXEのスペクトルモデルを用いて、銀河系中心における広がったプラズマ成分を抜き出し、その運動など性質の測定を行い、銀河系中心の活動を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
XRISM の打ち上げが予定よりも遅れ、本研究対象の観測も本研究課題の計画最終年度の3月の実施となった。そのため、研究経費の一部(出張旅費、計算機の消耗品としてのハードディスク、論文出版費)を翌年度に繰越をすることになった。
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