本研究では、突発天体現象、特に新星と矮新星の爆発初期の状態を明らかにするため、人間による判断を必要としない自動観測システム「Smart Kanata」を開発した。開発したシステムは広島大学かなた望遠鏡に搭載し、試験運用の後、定常運用に移行し、新星の初期スペクトルの取得に成功するなどの成果を挙げた。 最終年度は、自動分光観測、自動分光データ解析、自動多色撮像観測の機能を開発し、試験運用を行なった。これによって、Smart Kanata として予定していた全ての機能の開発が終了し、年度後期から広島大学かなた望遠鏡において、本システムの定常運用を開始した。これまでに10天体の観測機会を得たが、多くは悪天候のため観測に失敗した。しかし、2024年3月26日に発生した突発現象 TCP J17395720-2627410 に対して、Smart Kanataが新星の可能性がある天体と判定し、自動分光観測に成功した。得られた天体のスペクトルから本天体がヘリウム・ネオン型の古典新星であることを確認した。この結果は突発天体現象の速報サイト Astronomer's Telegram に報告され、Smart Kanata の初期成果の一つとなった。 本研究では、初年度に天体クラスの機械判別モデルの開発、次年度に自動分光観測モードの開発と試験観測を経て、最終年度にシステムが完成した。科学成果としては、上記の新星の他にも試験運用期間中の観測から、矮新星の降着円盤構造について既に研究成果があがっている。本研究で開発した Smart Kanataシステムによって、今後数年で新星と矮新星の爆発初期のデータが飛躍的に増加すると期待できる。
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