研究課題/領域番号 |
21K03643
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
家森 俊彦 京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (40144315)
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研究分担者 |
齊藤 昭則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10311739)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Lamb波 / トンガ海底火山噴火 / Swarm衛星 / 気圧変動 / GPS-TEC / 電子密度変化 / 磁場変化 |
研究実績の概要 |
2022年1月15日に発生したトンガ海底火山噴火が、大気波動を介して超高層大気・電離圏に引き起こした現象を、2022年度に引き続き、Swarm衛星データと高時間分解能地上気圧観測データおよび世界各地のGPS-TECデータを用いて調べた。その結果、噴火によって生成されたラム波の強度や波形が、火山から西向きに伝搬したものと東向きに伝搬したものとでは異なること、また、今回のトンガ海底火山噴火と規模が匹敵する1883年のクラカタウ火山噴火による気圧変化観測記録にもトンガ火山噴火の場合と類似した伝搬の東西非対称性がみられることがわかった。すなわち、西向きに伝搬するラム波の方が振幅が大きく、また、最初にシャープな正の気圧変化から始まる場合が多く、地球を周回して2周目の振幅も東に伝搬した場合より大きいことが観測データにみられた。また、GPS-TECの変動も、火山の西側であるアジア・オセアニア域の方が南北アメリカ域での変動よりも大きいことがわかった。その他、Swarm衛星の軌道近くにLamb波が到達したと考えられる時刻に、Swarm衛星により観測された磁場と電子密度が相関して変動していることが見いだされた。これらの結果は、Lamb波の伝搬とその超高層への影響について新たな知見を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021-2022年度の研究からは、下層大気現象、特に激しい降雨を伴うような気象現象が、Swarm衛星により400-500km高度で観測される磁気リップル現象の振幅と相関していること、また、全地球的に見ると、地域により振幅の異なることを示すことができた。2022年度に主として解析したトンガ海底火山噴火による微気圧変動やGPS-TEC変動の解析からは、火山噴火による鉛直共鳴現象の発生と磁力線を通した反対半球との電磁気的結合を確認するとともに、ラム波の通過に伴って、鉛直方向に伝搬し、鉛直音波共鳴を引き起こす音波の生成を強く示唆する結果が得られた。また、ラム波の振幅の異方性についても示唆され、2023年度はそれに関する解析を進めた。また、ラム波の通過に伴い、衛星高度で音波の影響と考えられる電子密度と磁場強度が相関する現象を見いだすことができた。この現象は、通常観測される磁気リップル現象とは異なる特殊な現象であり、磁気リップルの特性と生成メカニズムを考える上でも参考となる。
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今後の研究の推進方策 |
トンガ海底火山噴火により生成されたLamb波伝搬の東西非対称性については、論文として学術誌に投稿したが却下された。ただ、内容としては正しいと考えているので、データの追加と不十分だったと考えられる表現を改訂して再度投稿する。また、Swarm衛星でLamb波到着推定時に観測された磁場と電子密度が同期した変動については今後詳細に調べ論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年7月にベルリンで開催されたIUGGに研究代表者である家森俊彦が現地参加し、発表をおこなう予定であったが、旅費の高騰と、それとは別に学術誌が受理された場合、投稿料を支払う必要があり、予算が足りなくなる可能性が高くなった。そのため、IUGGでの発表は、現地参加する齊藤昭則が共著者であり当研究計画の分担者でもあるため、代わりにおこなうことにした。しかし2023年度内には投稿論文が受理されなかったので、次年度での研究成果公開のための旅費と学術誌掲載料支払いに必要となる次年度使用額が生じた。
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