研究課題/領域番号 |
21K03675
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後藤 章夫 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (80312685)
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研究分担者 |
土屋 範芳 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40207410)
山崎 新太郎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40584602)
松中 哲也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (60731966)
知北 和久 北海道大学, 北極域研究センター, 研究員 (70142685)
平野 伸夫 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80344688)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蔵王火山 / 火口湖 / 火山活動 / 水収支 / 水中ドローン |
研究実績の概要 |
噴火の潜在性を秘めた静穏な火口湖の活動度評価手法を確立するために,蔵王火山の火口湖・御釜をテストフィールドとして,①水・熱・化学物質収支の評価による地下熱水系の影響評価,②湖水中のヨウ素同位体比(129I/127I比)分析による地下深部起源物質の寄与の検出,③映像・音響探査による湖底調査を実施している. 令和4年度は計4回の現地調査を行い,このうち9月5日から9日にかけては,御釜湖底の音響探査と,水中ドローンによる湖底地形の撮影を行った.水中ドローンによる調査は2018年に発見された丘状地形で表面活動の有無を確認する目的で前年度にも実施され,この時は濁りにより丘状地形の観察が十分行えなかった一方で,湖底地形が2018年時点に考えられたより複雑であると判明した.令和4年度はサイドスキャンソナーによる湖底地形の再計測と,水中ドローンによる観察を行った.さらに,令和5年度に予定していたサブボトムプロファイラによる湖底下地質構造探査を前倒しで実施し,丘状地形の成因解明に挑んだ. サイドスキャンソナー探査の結果,湖底には水中地すべりによると思われる舌状の地形が見られ,丘状地形はその延長上にあった.丘状地形の大きさは東西2m,南北6m,高さ1mほどで,北側が傾斜35 度の比較的急傾斜になのに対し,南側が8度の比較的緩傾斜になっていた.水中ドローンによる観察では,丘状地形の斜面には縞が見られ,めくれ上がった地層の断面と考えられた.サブボトムプロファイラで見られた反射断面もこの構造を支持した.これらのことから,丘上地形は水中地すべりにより地質体同士が衝突して隆起・傾斜した湖底堆積物で,火山活動に由来するものではないと考えられる.結果的に,御釜湖底に火山活動に由来すると思われる地形は発見できなかったが,この調査で用いられた手法が,火口湖の地質調査に有効であることが確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では,サブボトムプロファイラによる湖底下地質構造探査は最終年度に行う予定だった.これを1年前倒しで実施し,しかも期待していた以上に高密度かつ高精細な地質構造を得ることができた. 水・熱・化学物質収支の評価による地下熱水系の影響評価は,結氷期の水温変化から地殻熱流量が求められるなど,すでに2本の論文となる成果を挙げている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に予定していたサブボトムプロファイラによる湖底下地質構造探査は令4年度に実施され,水中ドローンによる画像とも合わせ,湖底の丘上地形が火山活動によるものでなく,水中地すべりによる圧縮で生じたと推定された.しかしこれは映像や音響という物理的シグナルにより推定されたもので,露頭断面の連続的な調査によって直接的に確かめられたわけではない.そこでコア抜きにより湖底堆積物を採取し,推定された地質構造と整合的であるかを確かめる.これは当初の計画にはなかった,発展的な試みである. 水・熱・化学物質収支の評価による地下熱水系の影響評価は引き続き実施する.これまでの調査で,御釜では表面的な活動が見られない一方で,地下からの熱供給を示す冬季の水温上昇が観測されている.過去2年のデータとも合わせ,御釜の熱活動の変動評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の調査で,調査補助の委託費用を別予算で支弁したため,未使用額が生じた.令和5年度の水中ドローン調査では,業者からの派遣が前年度の1名から2名に増えるので,それに伴う業務委託費増分に前年度の未使用分を充てる.
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