研究課題/領域番号 |
21K03715
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 究 東京大学, 地震研究所, 教授 (10345176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地球内部構造推定 / 脈動 |
研究実績の概要 |
本課題では、波面の曲率の情報を用いた新たな解析手法 (auto-focusing 法) を用いた地球深部構造の推定を目指しています。新たな試みとして、遠地で発生した脈動P波を継続時間の長いイベントとして取り扱う解析手法を提案しました。本年度は、昨年度作成した2004年-2020年の期間のデータ (Nishida and Takagi, 2022) を用い、0.1-0.25Hzの周波数帯域でS波脈動の励起について系統的に調べました。解析には、防災科学技術研究所の展開する高感度地震観測網Hi-netの観測点691点の水平動を利用しました。脈動P波が励起されている期間にS波が励起されているかアレー解析を行ったところ、SV波の振幅はP波の振幅よりも一桁小さいが、多くの地域で励起されていることが明らかとなりました。 さらに、脈動実体波を用いた観測点下の深部構造推定のため、一般化したレシーバー関数解析法を開発しました。解析には、Hi-net観測点691点の上下動・水平動の速度計記録を利用しました。昨年度作成した脈動実体波のカタログに対して、一般化したレシーバー関数解析手法を適用しました。得られた全レシーバー関数にアレー解析を適用したところ、日本列島直下のマントル不連続面でのP-s変換波(P410s/P660s)の検出に成功しました。この結果は、脈動実体波の利用により、地震活動とは独立に観測網直下のマントル不連続面を検出できることを示唆しています。 現在、研究成果をまとめ、投稿準備中です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度作成した脈動P波のカタログを用いて、日本列島直下のマントル遷移層で変換する波(P-s変換波)を検出し、マッピングすることに成功したため。現在研究成果を投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、日本列島に展開されているHi-netを用いて、全球的なP波脈動のカタログだけでなくS波のカタログ化を行う予定である。日本列島のデータを使っている限りにおいて、カタログの空間的なカバレージには限界がある。今年度に引き続き北米などのデータを用いた解析を行い、今後は各国に展開されるより多くの地震波形データに適用する予定である。現在はP-s変換の検出のみ成果としてまとめているところであるが、今後は異なった深度で変換・反射した地震波を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、コロナ禍の影響もあり、当初想定していたよりも海外出張回数が少なかったため。また、論文投稿費用に関しても、当初想定していたよりも少額となった事も一因である。来年度は最終年度である事もあり、海外での研究成果発表も予定しており、論文投稿費用も必要となる予定である。
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