2023年度は実風車スケールのレイノルズ数(O(10^6))における動的翼周り流れを対象とし,ボルテックスジェネレータ型プラズマアクチュエータ(VG-PA)およびスパン型プラズマアクチュエータ(SP-PA)を用いた動的失速制御の数値解析結果に関する検討を行い,制御効果と制御メカニズムについて明らかにした.当初は実験室スケールの回転翼周り流れを対象として,各種PAを用いた流体制御を行う予定であったが,2022年度に得られた結果より,実験室スケールの比較的レイノルズ数が低い条件(O(10^5))ではVG-PAの特徴的な制御効果が得られないことが明らかとなったため,2023年度はVG-PAの制御効果が期待できる高レイノルズ数の動的翼周り流れに解析対象を変更した. 解析結果より,VG-PAを用いた場合,翼の後縁から前縁に移動する乱流剥離の移動を抑制し,乱流剥離渦が生成される迎角を遅らせることで動的失速迎角が増加した.一方,SP-PAを用いた場合,翼の前縁付近から生じる前縁剥離渦の生成迎角を遅らせることで,動的失速迎角が増加した.加えて,SP-PA/VG-PA併用型では,乱流剥離渦と前縁剥離渦の両者に対して生成迎角を遅らせることができ,失速迎角がSP-PA単体,VG-PA単体よりもさらに増加した. 研究期間全体を通して,VG-PAおよびSP-PAを用いた静的翼周り流れおよび動的翼周り流れの剥離制御を幅広いレイノルズ数に対して行い,各レイノルズ数における剥離制御効果と効果的なPA配置・駆動条件に関する知見を得た.これらの知見は,多様な風況に順応可能な風車を実現する能動的剥離制御技術の確立に大きく役立つことが期待できる.しかし,実スケールの風車を対象とした高レイノルズ数・回転翼周り流れに対するPAを用いた剥離制御については実施できておらず,今後の課題となった.
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