本研究課題は透磁率変調に基づく可変界磁PMモータにおいて,従来のd軸電流とq軸電流だけでなく透磁率変調電流とする零軸電流も含めて三次元空間における最大トルク制御(拡張MTPA:Maximum Torque Per Ampere制御)を新たに構築し,従来のd軸とq軸電流だけからなる二次元平面上でのMTPA制御の枠組みを超えることを目的としている。 最終の2023年度は,デュアルインバータの直流バス(PとNレール)を共通化して,損失低減の観点からP,N両方に1個ずつ透磁率変調巻線を挿入する回路構成を採用し,零軸電流を流す経路を確保した。拡張MTPAの適用については,これまでに明らかとなったd軸電流,q軸電流,零軸電流の制御アルゴリズムに基づき,それをデュアルインバータに適用した。前年度では第3次高調波が電圧電流に生ずる問題が顕在化したが,空間ベクトル変調における電圧ベクトルの出力シーケンスを適切化することにより,この問題を解決することができた。その結果,当初期待されたデュアルインバータによる拡張MTPAが良好に実現できることがシミュレーションで確認された。また,デュアルインバータ駆動を想定した新たな可変界磁PMモータ(最大出力35kW)が別途完成したので,これをデュアルインバータにより駆動する実験検証に着手し,構築した理論的枠組みを裏付ける実験データを獲得した。 本研究課題の研究期間全体を通じて,(1)三次元空間で出力トルクが最大となるd軸電流,q軸電流,零軸電流の組合せを理論的に検討 (2)三次元空間に拡張されたMTPA制御の条件を定式化し,d軸電流,q軸電流,零軸電流の制御アルゴリズムを明確化 (3)シミュレーションによる3軸電流制御を確認 (4)三相4線式インバータやデュアルインバータによる実機運転試験の実施などを行った。その結果,所期の目的を達成することができた。
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