研究課題/領域番号 |
21K04352
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松 幸平 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (20283674)
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研究分担者 |
北守 顕久 大阪産業大学, 工学部, 准教授 (10551400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 畳斗 / 重層斗きょう / 木質ダンパー / 上載荷重 / 静的正負繰り返し実験 / 正弦波掃引振動実験 / 減衰定数 / 等価剛性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究課題は、中国広東省潮州市に現存する北宋再建の開元寺天王殿(築979年、1980年に大改修)に見られる石柱の上に斗きょうを何重にも積層した「畳斗:重層斗きょう」構造を研究対象としたもので、実際の畳斗構造の一部を取り出して単純なモデル試験体を作成し、斗の積層数と上載荷重の大きさを実験パラメータとして動的ならびに静的実験を行い、初期剛性や変形能力の関係を調べた。動的実験では試験体の初期剛性と減衰定数を把握する目的で小型起震機を用いた1~10Hzの範囲での正弦波掃引振動実験を行った。動的実験終了後、静的加力用木材ブロックの上に回転軸受けを固定し、油圧ジャッキと鋼製ワイヤーを用いて上載荷重を与えつつ、1/300rad~1/15rad各1回の静的正負繰り返し水平加力実験を行った。なお上載荷重のレベルは、P=5kNとP=10kNの2通りとした。固有振動数の評価はスペクトル解析法とRD法の両方で、また減衰定数と等価剛性の評価はRD法で行った。固有振動数の評価値は、両方の方法でほぼ同じ値が得られたので、信頼性は高いと考えられた。等価剛性は斗きょうの層数が減るに連れて増加するという予想通りの結果であった。一方、減衰定数は斗きょう層数の増加に伴って増加するという予想通りの結果であったが、その増加傾向は指数関数的であった。今回の予備的な結論として、供試モデル重層斗きょう試験体の減衰定数はかなり高く、研究当初期待した「木製ダンパー」としての働きを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した小型起震機を用いた動的実験ならびにオイルジャッキを用いた静的加力実験はほぼ順当に実施できた。得られた結果も概ね合理的であると現時点では判断された。ただ、遺憾な点が一つあった。それは、供試した斗きょう層数の異なる5種類の試験体を静的・動的実験の全てで繰り返し使用したため、最後の実験で柱と大斗を接合していた木ダボ接合部が塑性変形を起こし、正しい結果が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は研究計画に記載したように、中国寧波市に現存する北宋再建の保国寺大殿に見られる扶壁きょう構造を模したモデル試験体を作成し、斗きょうの面内配列等を主たる実験パラメータとして静的加力実験を行い、その力学的性能を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の大阪産業大学の北守准教授が分担金20万円の内、\11187円しか使わなかったので、残金\188,813が生じた。次年度における使用計画については、両者で協議の上、有効に使用する予定である。
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