研究課題
基盤研究(C)
本研究では,エタノールに浸したステンレス鋼にパルスレーザー照射し,これにより表面直下に炭素をドープすることで水素(重水素)透過の抑制を試みた.レーザーのフルエンスと照射時間を適切に選ぶことにより透過を抑制することができた.透過減少の理由として,炭素ドープにより表層の水素溶解度が低下することが示唆された.また,673K(400℃)に保持するとドープした炭素が移動(拡散)してしまい,透過抑制効果が下がってしまうことが分かった.したがって,実用の上では比較的低温で使用することが好ましいと考えられる.
核融合炉工学
水素利用が広まる中で水素の漏洩を抑制する技術の需要が増している.このような技術として,水素透過の小さい材料を薄膜として水素容器表面にコーティングする手法が主流となっている.いっぽう,コーティング膜は剥離やクラックなどの潜在的な弱点を有する.本研究は,炭素ドープにより金属表面そのものを水素が侵入しづらい性質に変えることができる技術である.そのため,コーティング法と組み合わせて使うことでコーティング法の弱点を補完し,水素の漏洩をさらに抑制する技術として期待できる.