研究課題/領域番号 |
21K04764
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山内 紀子 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20598106)
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研究分担者 |
尾形 慎 福島大学, 食農学類, 准教授 (10532666)
小林 芳男 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40250849)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微粒子 / ナノ粒子 / 糖鎖 / 磁性 / 蛍光 / ソープフリー乳化重合 / ウイルス / ポリマー |
研究実績の概要 |
ウイルス感染症の拡大を抑制し、かつ患者の重症化を防ぐためには、ウイルス保有者を早期発見し、適切な治療を行う必要がある。感染初期のウイルスの有無を高精度で判定するためには、検体中のウイルスを濃縮する技術が求められる。本研究では、ウイルスを特異的に認識する糖鎖を表面固定化したポリマー粒子合成法を開発する。さらに、磁性粒子も共存させて重合を行うことで、外部磁場によるウイルス濃縮を可能にし、さらなる高感度検出に繋げることを目的としている。 令和3年度は、磁性粒子としてNi粒子をコアとし、その表面にグルコース固定化ポリメタクリル酸メチル(PMMA)シェルを形成した結果を、原著論文として発表した。Ni粒子は、加熱処理なしで結晶化することで知られるヒドラジン還元法によって合成した。Ni粒子はアミノプロピルトリメトキシシランで表面処理を施した後、水溶媒中に分散させ、メタクリル酸メチル(MMA)モノマー、過硫酸カリウム(KPS)重合開始剤、糖としてオクチル-β-D-グルコピラノシドを加えてソープフリー乳化重合を行った。生成粒子径は200 nm程度であり、比表面積の観点(粒径が小さいほどよい)とハンドリング性の良さ(粒径が小さすぎると扱いにくい)のバランスが最適なサイズと考えている。水に分散させた生成粒子に外側から磁石を近づけると、10秒以内に磁石の近くに集まったことから、外部磁場による分離・回収が容易であることがわかった。さらに、PMMAシェル内に蛍光色素も入れることで、磁石で回収される様子を蛍光でモニターすることが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性粒子(Ni粒子)をコアとし、グルコース固定化PMMAをシェルとした複合粒子を合成して、その結果を原著論文として発表できたので、概ね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
粒子表面に固定化したグルコースを、インフルエンザウイルスと特異吸着するシアロ糖鎖に変えて、粒子を合成する。粒子表面への糖鎖の固定化の評価は、タンパク質を用いた評価とともに、インフルエンザウイルスを用いた評価も行い、実際にウイルスの濃縮に利用できることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は正立顕微鏡システムを購入した他、生成粒子の糖鎖固定化評価のためのタンパク質(レクチン)の購入などを行った。学会がオンラインになって旅費がかからなかったことや、実験を効率的に進める工夫をしたことにより、未使用額が生じた。未使用額は、令和4年度に新たに必要となる消耗品や試薬の購入にあてる。
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