一般に,バッチプロセスのモデルをデータ駆動型のアプローチで構築しようとすると,モデル構築に必要なデータ量を確保することが困難であり,結果として十分な精度のモデルを構築することができなかった.この課題を解決するために,本研究では,転移学習やマルチタスク学習の考え方を活用した手法を,簡単な数値例やシミュレーションデータによって検討してきた. 最終年度には,前年度までの結果を整理して手法として確立した.具体的には,既往のスパースモデリングやマルチタスク学習,転移学習などの手法をベースとして,バッチプロセスへ適用する際の課題から考察して新たな手法の検討を進めた.その結果,評価関数を適切に工夫することなどによって,従来の手法では運転データが少なすぎて十分な精度のモデルを作成することが困難であった場合に対しても,運転状況の異なる他のバッチのデータをより効率よく活用することが出来る手法を開発することができた. さらに,実際のバッチプラントの運転データに対して開発した手法を適用する検討も実施した.その結果,従来の手法と比べてより少ないデータ量でも高精度なモデルを構築できることが確認され,開発した手法の有効性を検証することができた. 以上述べてきたように,本研究によって,データ量が比較的少ないバッチプロセスにおいても,データ駆動型のアプローチで高精度なモデルを構築するために有効な手法を開発することができた.
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