研究課題/領域番号 |
21K04999
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
脇坂 暢 富山県立大学, 工学部, 教授 (40377601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電解水素化 / 多環芳香族炭化水素 / 多電子移動 / マイクロエマルション |
研究実績の概要 |
本研究では、多環芳香族の1段階電解水素化反応の制御および機構解明を目的とし、本年度は、マイクロエマルション反応場の構築、電解条件による反応生成物の分析、および反応機構解明のための微分電気化学質量分析装置の作製を実施した。 本年度は多環芳香族としてナフタレンを取り上げ、電解反応場としてのマイクロエマルションの調製を行った。反応活性および反応選択性を調査するため、支持電解質のpH、界面活性剤の種類と添加量を変えて様々な反応溶液を調製した。 試験極にはこれまでトルエンの電解水素化に活性が認められたPt-Ru合金触媒を採用し、調製したマイクロエマルションにて定電流電解を試みた。生成物はガスクロマトグラフィーにて定量した。その結果、マイクロエマルションの相状態に反応活性、反応選択性ともに強く依存することがあきらかとなった。界面活性剤および補助界面活性剤を多く添加した相では、4電子反応によりテトラリンが多く生成した。他方、界面活性剤の少ない相では、10電子反応によるデカリンが主に生成した。また、デカリンの殆どがcis体であり、Langmuir-Hinshelwood機構による反応が示唆された。また、実用上重要であるアルカリ型のマイクロエマルションでの電解水素化にも成功した。 反応機構に関してより詳細な解析を行うため、専用の微分電気化学質量分析器を作製した。マイクロエマルション電解に実績のあるPEEK製二室セルを改造することで、試験極から生成物を真空計に取り込む工夫を行った。真空取り込み口の膜にはガス透過能の高いテフロンを採用し、比較的大きな芳香族炭化水素分子を透過できるよう、膜の細孔径、厚さ、重ね合わせ枚数について検討した。 研究成果の一部は学術会議にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、サブテーマA活性・反応選択性のスクリーニング、サブテーマBマイクロエマルションのキャラクタリゼーション、サブテーマC微分電気化学質量分析装置による反応機構解析の三つを軸に研究を進めることを掲げた。本年度はサブテーマBについて準備段階にとどまり、時間的に本実施することがきなかった。一方、サブテーマAとCに関しては目標以上に成果を上げることができた。総合的におおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はサブテーマBについて本格実施する。小角X線散乱によりマイクロエマルションの相構造を明らかにし、本年度あきらかとなった反応選択性のマイクロエマルション相依存性についてその因子を探る。また、サブテーマCを進め、作製した微分電気化学質量分析装置を用いて、各種電解条件でその場で(時間の関数、電位の関数として)生成物を分析する。テーマBとCの結果をあわせて、電解水素化反応機構への本質的理解を目指す。また、得られた成果を学術論文として発表する。
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