研究課題
基盤研究(C)
ハロゲン化アリールに対して入手容易な化学原料をパラジウム触媒を用いて多成分連結し、高付加価値の複雑な構造をもつ化合物を合成する新規有機合成手法の開発を目指した。鍵とするのがベンジルパラジウム触媒の遠隔位での結合形成反応の誘起と活用である。これを活かし、ブロモアレーンの1,4-カルボアミノ化、アザスピロ環化、1,4-二官能基化/環化反応、そして環状ジエン合成法を開発した。開発した反応を用いて抗腫瘍活性物質や生物活性天然物の迅速合成法(いずれも10工程未満)にも達成した。
有機合成化学
学術的意義:分子触媒により、前例のない位置選択性で多成分分子を連結する新規手法を提供した。ベンジルパラジウムは古くから研究されてきたが、ベンジル置換が主な反応性だった。本研究では未開拓な本化学種の遠隔位結合形成を活用し、安価な化学原料から高付加価値分子を合成する、新規多成分連結反応を開発した。社会的意義:本手法では一度の反応操作で最大4つの結合形成が可能である。これは機能性分子群の短工程合成へ直結しうる。実際に、開発した反応を用いれば、様々な生物活性物質の短工程合成ができることを示した。創薬研究での迅速なヒット・リード探索や安価な製造プロセスの確立へつながる可能性がある。