研究課題/領域番号 |
21K05108
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
庄司 真紀子 (田仲真紀子) 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90397703)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNA / 凝縮場 / 液晶 / 電子移動 |
研究実績の概要 |
本研究では、種々の分子夾雑・混雑環境でのDNA凝縮体の形成条件を検討し、メゾスコピックスケールの可逆的な微小凝縮場の形成がDNAに与える機能の解明を目指した。具体的には相分離凝縮場でのDNAの電子移動と核酸塩基損傷特性に着目し、光を用いて化学的アプローチにより解析を行うことで生体分子の微小反応場としての凝縮体の性質を調べた。DNA凝縮場でグアニン塩基、またその連続配列が電子移動により酸化損傷を受ける効率およびその特性については、まだほとんどが未解明である。そこで当該年度の研究ではまずホール捕捉により開環反応を起こすグアニン類縁体を含むDNA鎖を固相合成により合成し、光増感剤を含むDNA鎖とアニーリングにより相補鎖とした。この修飾DNAについてポリエチレングリコールを用いて人工的に作製した分子混雑環境下で液晶とした。修飾DNAを含む液晶について、光照射による電子移動をスタートさせグアニン酸化損傷を誘発する手法により、電子移動特性を評価した。高速液体クロマトグラフィーによる損傷塩基の定量を行い、それぞれの凝縮場での電子移動効率の評価を行った。その結果、凝縮場における電子移動効率の大幅な増大が観測された。解析の結果、液晶中でスタッキングした異なるDNA鎖間での電子移動が起こったことが示唆された。
当初は購入を予定していた備品の凍結乾燥機については消耗品代その他の研究費用がかさみ、購入できなかったため、デモ機の使用とあわせ、時間とサンプルおよび消耗品であるカラム代のロスがあるが、遠心濃縮とカラムを用いてDNAの精製をおこなった。その他、実験に使用する小型機器、試薬、合成DNA、HPLCカラム、チップやチューブ等を購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ホール捕捉により開環反応を起こすグアニン類縁体を含むDNA鎖を固相合成により合成し、光増感剤を含むDNA鎖とアニーリングにより相補鎖とした修飾DNAを用い、ポリエチレングリコールを高濃度で含む条件でメゾスコピックスケールの液晶を形成させた。光照射により修飾DNAによる液晶内での電子移動特性を評価し、凝縮場における電子移動効率の変化を明確に検出することができた。結果をまとめ、論文として国際誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
DNAがどういった条件で集合し、共存分子を含有するのかについては、未だ明らかになっていないことが多い。凝縮場では混在する多種の生体分子の区画化による損傷特性の変化、電子移動による電子伝達経路の変化が起こることなどが予想される。そこで蛍光分子修飾DNAを用い液滴の顕微鏡観測を行うことで、DNAが凝縮体に含まれる条件を精査し、種々の分子が混み合った状態での生体分子の微小分離場としての凝縮体の性質を調べる。また複数種類のDNAを用いることによって液晶を形成させることによって、液晶内での電子伝達特性の変化を検討する。
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