研究課題/領域番号 |
21K05330
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浦口 晋平 北里大学, 薬学部, 講師 (20638837)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DNA損傷 / SOG1 / 細胞分裂 / 根端メリステム / シロイヌナズナ / 有害金属 |
研究実績の概要 |
本研究は「新奇DNA損傷定量法の開発と有害金属による影響の評価」および「植物の有害金属耐性におけるDNA損傷応答機構の役割の分子遺伝学的解析」によって,植物の根端メリステム(分裂組織)の有害金属毒性と分子応答機構をDNA損傷の視点から理解することを目指すものである。 まずDNA損傷の新規定量法について,初年度はシロイヌナズナの核およびミトコンドリアDNAをターゲットとしたリアルタイムPCRによるDNA損傷評価系を確立した。野生型およびDNA損傷応答の制御因子であるSOG1の機能欠損変異株をDNA損傷誘導剤にばく露し,根端1cmより抽出したDNAにおけるDNA損傷を定量した。ストレスの用量依存的あるいは遺伝型依存的なDNA損傷の蓄積を高感度で検出できた。 続いて,植物の有害金属耐性におけるDNA損傷応答機構の解析について,初年度はDNA損傷応答の制御因子であるSOG1の機能欠損変異株sog1-101,SOG1の下流およびSOG1とは独立の上流因子の下流で,根端の細胞分裂を負に制御するANAC044,ANAC085の二重変異株anac044/085を用いて有害金属ストレス下での根の伸長や細胞分裂活性について検討した。亜ヒ酸、カドミウム、無機水銀に対するSOG1、ANAC044、ANAC085変異株の経時的な解析の結果、カドミウムではANAC044とANAC085の変異によって、亜ヒ酸と無機水銀ではANAC044とANAC085に加えてSOG1の変異によって根の伸長が野生型よりも大きかった。カドミウム処理によって,変異株では静止中心の周辺において死細胞が観察された。以上の結果より,有害金属の根端分裂組織に対する金属特異的毒性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル植物の根端におけるDNA損傷の新規定量法として,リアルタイムPCRを用いた方法を確立できた。また,有害金属応答におけるDNA損傷応答機構の関与について,鍵となる分子の機能欠損変異株を用いた解析により,金属特異的な応答を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
確立したDNA損傷定量法を用いて,根端における有害金属毒性としてのDNA損傷を評価していく。評価には,有害金属超感受性株であるcad1-3を用いるとともに,ATM,ATRからのDNA損傷シグナルを媒介する転写因子SOG1の欠損株を用いる。 また,有害金属ストレス下における根端分裂組織の応答について,細胞分裂およびオーキシンに着目して解析を進める。
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