本研究は、動物腸管に共生する運動性乳酸菌が、宿主免疫系に認識され得るべん毛抗原「フラジェリン」を持ちながらも炎症を誘導することがない理由を分子レベルで明らかにすることを目指したものであった。筆者らは、組換えタンパク質や組換え乳酸菌を用いた実験により、運動性乳酸菌がもつフラジェリンの免疫学的な低応答性は、受容体認識部位における特定のアミノ酸残基が病原体由来のフラジェリンと異なることに起因していることを示した。また、運動性乳酸菌のべん毛繊維がフラジェリン糖鎖修飾により安定化していることも炎症応答を減弱する要因になり得ると考え、これを証明するための糖鎖修飾遺伝子欠損変異株を作製することに成功した。
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