研究課題
土石流の発生ポテンシャルが高い山地流域を抽出する手法を構築するため、沖積錐(土石流扇状地)を手がかりに、その後背の山地流域における地形・地質因子を教師データとした決定木分析を行った。まず、地質の岩石強度が大きく異なる2つの地域(新第三紀堆積岩類地域と古第三紀付加体地域)を対象にし、決定木分析や現地調査を通して、地質の違いによる沖積錐の形成条件を検討した。シュミットロックハンマーによる測定および現地計測から、古第三紀付加体地域(主に、砂岩、スレートが分布)は、岩石強度:7.4-64.8MPa、節理間隔:5-25cmであった。一方、第三紀堆積岩類地域(主に、珪質泥岩、砂岩、礫岩が分布)は、岩石強度:7.4MPa以下、節理間隔:1-15cmであり、スレーキングの影響を受けやすく、古第三紀付加体地域よりも沖積錐上の表面粒径は細粒であった。決定木分析の結果、沖積錐の有無を決める地形因子とその階層順は、両地域ともに起伏比(比高/流域長)→最頻傾斜→流域長となり、共通した。一方で、沖積錐の有無を決める地形因子の閾値は、地質により異なることがわかった。さらに、2003年の豪雨により多くの土石流が発生した水系に対し、隣接水系の決定木分析の結果を適用して沖積錐の有無を推定し、推定の確からしさを検証した。その結果、沖積錐有(すなわち沖積錐が形成されうる)と推定された流域では沖積錐無と推定された流域よりも実際の土石流発生率が高く、土石流発生ポテンシャルの評価に有効であることが確認された。以上より、本手法は、様々な地質分布域に適用することで、地域ごとに土石流発生のポテンシャルを評価でき、河川の浸食や人工改変により実際には沖積錐が発達しない流域においても、潜在的な土石流発生のポテンシャルを把握することに活用できる。
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