研究課題
本研究は、仲間の存在が大胆行動に及ぼす影響と、大胆行動の脳内調節機構における神経ペプチドや神経伝達物質の関連性について、メダカを用いて解明することを目的として行った。これまでに、大胆行動をとった(大胆)個体において脳視索前核領域のドーパミン合成酵素(TH)の遺伝子発現量が大胆行動をとらなかった(慎重)個体よりも高いことがわかった。R5年度は、当該脳領域のドーパミン神経の軸索投射領域の解明と、ドーパミン受容体の遺伝子発現解析を行った。その結果、視索前核領域のドーパミン神経は、終脳、中脳および間脳の広範囲に渡って軸索を投射すること、投射領域に大胆個体と慎重個体の間に差はないことが明らかになった。また、ドーパミン受容体(D2R)遺伝子の発現量は、特に終脳において大胆個体のほうが慎重個体よりも高いことがわかった。これらの結果から、大胆行動時には視索前核領域のドーパミン神経が終脳に作用すると考えられる。魚類の終脳には、分界条床核、扁桃体、側坐核、線条体などが含まれる。これらの脳領域は哺乳動物において情動や意思決定などに機能することが知られている。以上より、メダカの終脳におけるドーパミンを介した神経伝達は大胆行動に伴う情動応答や運動亢進に重要な役割を果たす可能性が示唆される。一方、前年度までの実験において、脳内バソトシン(VT)およびVT受容体(V1aR1)の発現量は大胆個体と慎重個体との間で差はなかったが、R5年度に別のVT受容体(V1aR2)の発現解析をした結果、終脳における発現量が大胆個体で慎重個体よりも顕著に高いことがわかった。さらに、視索前核のドーパミン神経にV1aR2が発現することがわかった。以上のことから、バソトシンとドーパミンが共役して大胆行動にはたらく可能性が示唆された。いずれの神経が大胆行動時に主導的に機能するかについては、今後更に調べる必要がある。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 343 ページ: 114355~114355
10.1016/j.ygcen.2023.114355