本研究は、現代日本の農村における各種資源の再評価の要因と過程を検討し、これが人口減少期における、①新たな価値創生のメカニズムとの関連、②地域の豊かさ観の向上への影響、この二つの相互作用が③生産と生活の基礎を再構築して地域の持続可能性をどう高めるか、を明らかにすることを目的とする。分析対象地域は八ヶ岳南麓の農村地帯である。 令和3年度では、研究の第1段階の「人口減少期は新たな価値創出の機運を高めること」につき、コロナ感染症により碩学への聞き取り・現地調査が十分に実施できなかったため、人口論・文化人類学における地域社会の分析視点などの文献調査を中心に行い、関連する論点を整理した。研究の第2段階の、「農村における諸資源の再評価が導く新たな価値創出メカニズムの仮説設定」については、諸資源の再評価の可能性を誘う農村政策の近年動向を整理するとともに、新たなコミュニティの創成の可能性を、国土交通省が関係人口の実態を把握するために行った「地域との関わりについてのアンケート」(令和2年2020年9月)の個票データを用いて分析した。この結果は、「デジタルネイティブ世代の農村共同体との親和性」なるタイトルで、日本農業経済学会 (令和4年3月27日)において報告した。 令和4年度では、上記の第1段階の論点を、教育学等に分野を広げてさらに深堀するとともに、第2段階の論文に関連したデータ検証を追加で行った。 令和5年度では、研究の第3段階「農村における具体的な資源の、新たな価値創生への貢献状況の検討」に取り組んだ。八ヶ岳南麓を構成する長野県原村・富士見町、山梨県北杜市への移住者を対象としたアンケート調査を実施し、104名から回答を得、冒頭で掲げた①②③の目的に沿ったデータ検証を行った。これらの分析結果は、令和6年度以降に再整理し、内容を吟味したうえで、論文及び著作に取りまとめる作業を継続する。
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