研究課題/領域番号 |
21K05917
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
原田 和記 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80549543)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ESBL産生菌 / 犬 / 猫 |
研究実績の概要 |
検査会社から、犬猫由来の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生を疑う腸内細菌科細菌約400株を収集した。その後、ESBL産生性をキットにより確認したところ、現時点でKlebsiella属菌107株、Proteus属菌23株、Citrobacter属菌19株、Enterobacter属菌19株がESBL産生性であることを確認できた。さらにKlebsiella属菌については治療候補薬であるセフメタゾール(CMZ)、フロモキセフ及びラタモキセフに対する感受性を調査し、そのMIC50及びMIC90がESBL産生大腸菌と1管以内であることを確認し、これら候補薬はESBL産生大腸菌と同様にESBL産生Klebsiella属菌に対しても有用である可能性が示唆された。 さらに、ESBL産生菌感染症に対する候補薬の薬物動態学(PK)/薬力学解析のために、実験犬に対して候補薬の一つであるCMZを投与し、その血中動態を評価した。その血中動態からCMZ単回静脈内投与時のPKパラメータを10000回のブートストラップ法により解析したところ、半減期0.838時間、クリアランス4.934L/h、分布容積5.966mL/kgを得た。これらのPKパラメータに加えて、PDパラメータとしてESBL産生大腸菌の最小発育阻止濃度分布を、解析ソフトCrystal Ballに組み入れて10000個体の仮想母集団における治療成功率(ターゲット値はTime above MIC%が40%以上)を算出した。その結果、40mg/kgのCMZを1日2回投与時では45.93%、1日3回投与時には80.77%、1日4回投与時には90.77%と投与回数の増加により治療成功率を予想されることを確認した。結果として、犬のESBL産生大腸菌感染症に対するCMZ投与は40mg/kgで1日3回以上の投与が推奨されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検査会社からの菌株の提供は予定通り実施いただいており、目標株数に達していると言える。しかし、ESBL産生性の確認が若干遅れており、今後より推進していく必要がある。また、治療候補薬に対する薬剤感受性試験はKlebsiella属菌のみを対象にしか実施できていないため、今後他菌種についても進めていく必要がある。 薬物動態学/薬力学に関する調査については現在1薬剤のみの調査であるが、次年度には2薬剤を調査できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
ESBL産生菌候補株のESBL産生性の確認及び薬剤感受性試験を推進していくために、実験実施者としての学生または大学院生の増員を検討する。必要に応じてパート職員の補充も検討することとする。
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