研究課題
犬猫由来の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生性のKlebsiella pneumoniae 120株、Proteus mirabilis 29株、Enterobacter cloacae 69株についてさらに解析を行った結果、8 株のK. pneumoniae及び15株のE. cloacaeが同時にAmpCの産生(主にプラスミド媒介性)を行うことが判明した。薬剤感受性試験の結果、セフメタゾール(CMZ)及びフロモキセフ(FMX)については、AmpC同時産生株では高い最小発育阻止濃度を示すことが判明し、特にE. cloacaeでは著しく感受性が低下することが判明した。一方で、ラタモキセフ(LMX)についてはこれら2剤と比較すると感受性の低下はあまり認められず、同じセファマイシン系抗菌薬であってもin vitroでの有効性は異なることが示唆された(本結果については論文として受理済み)。一方で、LMXの実験犬に対する投与実験を行い、その血中動態からLMX単回静脈内投与時のPKパラメータを10000回のブートストラップ法により解析したところ、半減期1.24時間、クリアランス1.50L/h、分布容積2.70Lを得た。これらのPKパラメータに加えて、PDパラメータとしてESBL産生大腸菌の最小発育阻止濃度分布を、解析ソフトCrystal Ballに組み入れて10000個体の仮想母集団における治療成功率(ターゲット値はTime above MIC%が40%以上)を算出した。その結果、PK/PDブレイクポイントは1日2回投与時で4mg/kg、1日3回投与時で8mg/kgと、CMZよりも高い値となった。当該結果とin vitro調査の結果を比較検討すると、LMX 40mg/kg BID及びTID投与は、犬のESBL産生大腸菌及びKlebsiella属菌の感染症に対して有効である可能性が示唆された(当該内容は学会にて発表済み)。
2: おおむね順調に進展している
ESBL産生菌感染症に対する治療候補薬であるセファマイシン系薬剤3種類についての分離細菌に対するin vitroでの調査を終了することができ、また、同時並行で進めている犬における薬物動態学に関する調査も順調に実施できているため。
実験実施者としての学生及び大学院生の増員を検討する。また、協力可能な他研究機関や動物病院との連携も模索する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Veterinary Medical Science
巻: 85 ページ: -