本研究は、培養細胞における細胞老化誘導系を用いてクロマチン制御因子TAF-Iによる細胞老化の制御機構の解明を目的とした。ヒトの正常繊維芽細胞でTAF-Iの発現を抑制し、がん遺伝子を発現させて細胞老化を誘導したところ、炎症性サイトカイン遺伝子の発現異常や、細胞老化に特異的なヘテロクロマチン構造の形成に異常が観察された。またそれらの原因が、核に局在するプロテアーゼであるカテプシンL1の発現抑制を介したヒストンH3のプロセシングの異常によることを明らかにした。以上の結果より、TAF-Iは特異的なクロマチン構造の制御を介して、細胞老化に付随する遺伝子発現の制御に関わる可能性が示唆された。
|