研究課題
結核菌やMycobacterium avium-intracellulare complex (MAC)のような病原性抗酸菌は、好中球やマクロファージのような貪食細胞へ貪食された後、食胞へのリソソーム融合(食胞成熟)を阻害することで細胞内寄生する。最近我々は、ヒト好中球による抗酸菌貪食後の食胞を解析し、結核菌はManLAMを利用して食胞膜上のラクトシルセラミド(LacCer, CDw17)が形成する脂質マイクロドメインへのセラミド代謝酵素の分子会合を阻止することを見出した。また、本酵素は生理活性脂質であるセラミド-1-リン酸(C1P)を産生する。本研究では、結核菌による脂質マイクロドメインへの分子会合阻害とC1Pを介した生理機構の解明を目指すため、蛍光セラミドなどを用いた解析を行った。具体的には、超解像顕微鏡(STED)や生化学的方法により、ヒト好中球へ非病原性抗酸菌由来PILAMあるいは病原性抗酸菌由来ManLAMをコートしたビーズを貪食させ、それら細胞へ蛍光セラミドを取り込ませることで、どのような局在を示すか、あるいは、それらがどの様に代謝されるのかを解析した。このような解析の結果、PILAMコートビーズあるいはManLAMコートビーズを含む食胞の周囲に蛍光を観察することができた。また、高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)を用いた解析の結果、蛍光セラミドの代謝を観察することができた。
3: やや遅れている
C1Pあるいは関連分子の局在解析に時間を要しているため。
C1Pの局在解析あるいは関連分子の局在解析を行うことで、C1Pの生理機構の一端を解明し、結核菌のような病原性抗酸菌がどのように細胞内で生理活性脂質を制御し細胞内寄生してしまうのかを明らかにしていく。
コロナ禍による研究の遅れに伴い、本研究に必要な消耗品の購入を十分に行えなかった。これら消耗品については次年度購入する予定である。
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