研究課題/領域番号 |
21K06087
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
十島 純子 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (00431552)
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研究分担者 |
十島 二朗 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (00333831)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / クラスリン小胞 / リサイクル / TGN |
研究実績の概要 |
本年度は以下の研究を実施した。(1)クラスリン小胞の初期エンドソームへの融合機構の解明、については、まず①ゴルジ体からの輸送経路を遮断した際のクラスリン小胞-エンドソーム間の融合に与える影響、について調べた。trans-golgi-network(TGN)からの小胞輸送にはクラスリンやそのアダプタータンパク質が関わるため、ゴルジ体局在のクラスリンアダプタータンパク質の遺伝子欠損体を作成し、蛍光エンドサイトーシスマーカー(蛍光α-factor)の輸送を蛍光顕微鏡で調べた。その結果、GGAsを欠損した変異体では、TGNおよびその周辺に蛍光α-factorが蓄積し、エンドサイトーシス経路の輸送が著しく抑制されていることが分かった。また、この変異体では、TGNの中でTlg2pが局在する区画とArf GEFであるSec7pが局在する部位が顕著に異なることを明らかにした。さらに、クラスリン小胞とTGNの空間的相互作用について、Abp1pおよびTlg2p(Q-SNARE,TGNに局在)をそれぞれマーカーとして蛍光顕微鏡下で調べた。その結果、Abp1pがTlg2pでラベルされたTGN区画と結合しその部位に取り込まれる様子が観察された。これらの結果から、エンドサイトーシス経路において、クラスリン小胞はTGNの中でもTlg2p区画へと取り込まれた後、GGAs依存的にエンドソームへと輸送されることが示唆された。一方、クラスリン小胞のアクチン細胞骨格に沿った輸送のメカニズムについては、ラパマイシン誘導ヘテロ二量化を用いてクラスリン小胞とアクチンの結合を調べた。その結果、Pan1pおよびPan1p依存的にリクルートされるSla2p, Ent1p/Ent2pにより、アクチンとクラスリン小胞の結合が安定化していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エンドサイトーシスは様々な細胞外の物質を細胞内へと取り込む機構で、栄養物質の摂取、免疫応答機構、病原体の細胞内への感染など多くの生命現象に関与している。以前の研究で、研究代表者らは出芽酵母の受容体仲介型エンドサイトーシスを可視化する蛍光エンドサイトーシスマーカーの開発に成功し、そのマーカーを用いたエンドサイトーシス関連遺伝子の網羅的なスクリーニングを行なった。その結果、エンドサイトーシスの輸送経路に異常のある多数の出芽酵母変異体の単離に成功した。本研究ではスクリーニングにより得られた変異体の詳細な解析を通して、エンドサイトーシス経路におけるエンドソームの形成、成熟を中心とした細胞内輸送経路の全体像を明らかにすることを目的とし、(1)クラスリン小胞の初期エンドソームへの融合機構の解明、(2)ゴルジ体由来小胞とエンドソームの融合機構、(3)エンドソームにおける積荷の分解とリサイクリングの選別機構、の3つのプロジェクを実施している。本年度はcovid-19の感染拡大に伴い、学内での研究が制限されたため、研究計画は全体としてやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題(1)①については、クラスリン小胞がエンドサイトーシス経路を輸送される際TGNを経由する意義について、細胞膜へのリサイクル経路との関係を調べる。具体的には、TGNから細胞膜へリサイクルされるSnc1p (v-SNAREタンパク質)の局在を野生型とGGAs(ゴルジ体局在のクラスリンアダプタータンパク質)欠損体で比較する。また、Snc1pがTGNの中でTlg2p区画とSec7p区画のどちらに局在するかを明らかにする。この実験は研究課題(3)とも一部重複する。研究課題(1)②についてはアクチンとこれらタンパク質がどのドメインを介して結合するか、さらに、エンドサイトーシスサイトーシス過程においてこれら三者のタンパク質複合体がどのようなメカニズムで形成されるか、について明らかにする。研究課題 (2)については、TGNからの輸送に関わるGGAの各ドメイン欠損体を作成し、蛍光α-factor輸送やTGNでの槽成熟に対する影響を調べる。これにより、GGAsのエンドサイトーシス輸送における具体的な役割を明らかにする。また、ゴルジ体・TGN局在タンパク質がGGA欠損体においてどのような時空間的影響を受けるかを調べていく。研究課題 (3)については、研究課題(1)と合わせて進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はcovid-19の感染拡大に伴い、学内での研究が制限されたため、結果の解析や論文の執筆を中心に研究を行った。このため予定していた試薬や器具などの消耗品を購入しなかった。これらは来年度以降の研究費で購入する予定である。また、2022年度は国内の学会をで研究成果を発表する予定であり、これらの参加費や旅費として使用する予定である。
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