研究課題/領域番号 |
21K06335
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
工藤 慎一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90284330)
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研究分担者 |
吉澤 和徳 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10322843)
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 親による子の保護 |
研究実績の概要 |
ツノカメムシ科の既存データを用いて,卵形状の進化に対するメス親による子の保護進化の効果を,Tsai et al. (2015)で提出された分子系統に基づく系統的一般化最小二乗法を用いて検討した。従属変数には卵の長径平均値,独立変数には卵の短径平均値と親による子の保護の有無ならびにメス体サイズ平均値を採用した。その結果,メス親による子の保護(卵塊防衛)の獲得に対応して,卵の短径に対する長径の相対値,すなわち卵のアスペクト比が大きくなる進化傾向が検出された。 さらに,キンカメムシ科の一部の種で得られた卵の画像データを用いて,楕円フーリエ解析による卵の形状の分析を行った。卵の輪郭形状を解析して得られた楕円フーリエ記述子に対して主成分分析を行い,卵の形状を表現する寄与率の高い第1および第2主成分を抽出した。各種のデータをこの二次元主成分空間にプロットしたところ,メス親の卵塊防衛が知られる種のデータは「細長い卵」と解釈可能な位置に集中する傾向が認められた。この結果は,アスペクト比を用いたツノカメムシ科の解析結果の傾向と一致する。ただし,検討できた種はわずかである。コロナ禍により残念ながらほとんど野外調査が実施できず,新たな分類群におけるデータ収集が進まなかったため,この結果はあくまで暫定的なものと言わざるを得ない。 これらの結果に加えて,次年度以降の解析を見据えてコオイムシ,オオコイムシ,タイコウチ等,一部の水生分類群で卵画像データを得た。卵画像データが得られた種に関しては,今後の分子系統構築のためDNAサンプルを保存している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により残念ながらほとんど計画していた野外調査が実施できず,水生分類群の一部を除いて新たな分類群のデータ収集がほとんど進まなかっため。
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今後の研究の推進方策 |
コオイムシ科やアメンボ科等の水生分類群,さらに陸生分類群のキンカメムシ科やツチカメムシ科を中心に可能な限り多くの種で卵塊および卵の画像データを収集することが当面の課題となる。研究チームメンバー自身による遠方での野外調査が引き続き困難となる状況であれば,各地の研究者に画像データの提供を依頼することも検討したい。同時に新規分類群のDNAデータも収集し,最終的な系統種間比較分析の基礎となる系統仮説構築の準備も進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,予定していた野外調査がほとんど実施できなかったこと,さらに成果発表を行った学会大会がオンラインとなったことから,旅費の使用額が予定よりも大幅に減少したため。 次年度以降,主に野外調査あるいは成果発表のための旅費に使用する予定である。
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