研究実績の概要 |
ヒドラゾンは、単純なイミンと同様にイミノ炭素は求電子性を有しており、Grignard試薬との求核付加反応やトリエチルシランによる還元反応などが報告されている。 一方で、ヒドラゾンはアミノ窒素がもつ非共有電子対とC=N結合の共鳴により、イミン類でありながら反応条件によってはイミノ炭素が求核性も示す興味深い化合物である。そこで、本年度はまずヒドラゾンのイミノ炭素上の求核性に着目し、ヒドラゾンの合成化学的有用性の拡大を目指して、多様なアルキル基を有する1,2,4-トリアゾールの新規合成法の開発を検討した。容易に合成可能なN,N-ジアルキルヒドラゾンをニトリル溶媒中、NCSおよびBF3OEt2と遮光条件下反応させると形式的[3+2]付加環化反応および脱アルキル化反応が進行して、多置換トリアゾールが得られることを見出した。本反応は、通常合成が困難な窒素原子上にアルキル基をもつ1,2,4-トリアゾールも合成できる汎用性の高い合成手法である。 次に、tBuIの加熱により生成する無水ヨウ化水素を還元剤およびブレンステッド酸として利用したN-アリール-C-シクロプロピルヒドラゾンのFischer型インドール環形成反応を検討した。フェニルヒドラジンとシクロプロピルアセタールを加熱条件下、tBuIで処理すると、期待通り3位置換インドールが得られことが明らかとなった。本反応では、まずN-アリール-C-シクロプロピルヒドラゾンが生成した後、Fischer型の転位が起こり、スピロインドレニンへと変換される。その後ヨウ化物イオンのシクロプロピル基への求核攻撃による開環反応の後、ヨウ化水素による還元が連続的に進行し、インドールが生成したと考えている。また、本反応は様々な置換様式をもつインドールの合成が可能であることが明らかとなった。
|