研究実績の概要 |
計画初年度である2021年度はビタミンD3や7-デヒドロコレステロール酸化成績体を誘導体化の対象化合物にした,多点認識に基づき,超高感度と位置異性体の相互弁別を含む超高選択性をもたらすスマート試薬の開発を主として行った.すなわち,1,2,4-triazoline-3,5-dione (TAD) を母核とし,その4位にESI活性原子団を導入したいわゆるCookson型試薬の開発を試みた.ESI活性原子団には常時正に荷電した原子団を選択した.荷電構造にはアンモニウムとピリジニウムが良く知られるが,誘導体化試薬には適度な疎水性が好適であることからピリジンをベースに2,6-位をメチル基とした2,6-dimethylisonicotinic acidを用いて4段階で鍵中間体である2',6'-dimethylpyridyl-1,2,4-triazolidine-3,5-dione (ウラゾール体) へと導いた.得られたウラゾール体はヨードメタンによるピリジンのN-メチル化が定量的に進行し,目的の1',2',6'-trimethylpyridinium-1,2,4-triazolidine-3,5-dioneを得た.これを酢酸エチル中ヨードベンゼンジアセテートにて脱水素酸化し,新規荷電Cookson型試薬:1',2',6'-trimethylpyridinium-1,2,4-triazoline-3,5-dione (TPTAD) の合成に成功した.TPTADとビタミンD前駆体である7-デヒドロコレステロールは定量的に反応が進行したため,本試薬はs-cis-ジエンへの特異的な反応性を有することも証明した.
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