研究課題/領域番号 |
21K06539
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
間下 雅士 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30738886)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / PARP1 / DNA傷害 / 上皮成長因子受容体 / がん |
研究実績の概要 |
Poly(ADP-ribose)polymerase 1 (PARP1) は、DNA傷害によって活性化し、poly(ADP-ribose) (PAR) を産生する。PARは核から細胞質に移行し、標的タンパク質と結合することで活性や局在を変化させる。申請者は、DNA傷害時、PARP1の活性化によって上皮成長因子受容体 (EGER)をはじめとする細胞膜受容体がクラスリン依存的にエンドサイトーシスされることを明らかにしている。本課題は、その細胞内メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、PARP1の活性化に伴ってエンドサイトーシスされる細胞膜受容体の種類およびPARと結合し細胞膜受容体のエンドサイトーシスを促進するタンパク質の同定を目的とした。細胞膜受容体には、イオンチャネル型、Gタンパク共役型、酵素関連型受容体の3種類に大別できる。PARP1依存的細胞膜受容体のエンドサイトーシスは、酵素関連型受容体のみに生じることを明らかにした。酵素関連型受容体は、ユビキチン化修飾を受けることでエンドサイトーシスされるが、本機構においてもユビキチン化修飾が必要であった。EGFRなどの酵素関連型受容体のユビキチン化修飾は、通常、E3ユビキチンリガーゼCbl1が関わる。siRNAを用いた手法により、本機構においては、Cbl1ではなく、別のユビキチンリガーゼIdunaが関与することを明らかにした。DNA傷害時、PARP1によって産生されたPARがIdunaと結合し、その結果、Idunaが、EGFRなどの細胞膜受容体をユビキチン修飾することでクラスリン依存的エンドサイトーシスが生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究目標である"細胞膜受容体のクラスリン依存性エンドサイトーシスを促進するポリADP-リボシル化修飾の標的タンパク質を同定する"ことが達成できた。加えて、Iduna以降の細胞膜受容体のエンドサイトーシスの分子機構を明らかにしており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
PARP1依存的細胞膜受容体のエンドサイトーシスには、E3ユビキチン化タンパク質Idunaが重要であることを明らかにした。IdunaにはWWEドメインと呼ばれるPAR結合ドメインが存在する。今後の研究方針として、IdunaのWWEドメインの変異導入によるPARP1依存的EGFRのエンドサイトーシスへの影響を調べる。加えて、非小細胞肺がん患者で見られるEGFR変異体(G719A、T790M、L858R) においても、PARP1依存的にエンドサイトーシスされ、受容体シグナルを抑制することを明らかにしている。IdunaがPARと結合するように模倣した変異体を作製し、細胞膜受容体の遺伝子変異を起因とするがん細胞に発現させ、変異受容体のエンドサイトーシスが促進し受容体シグナルが遮断されることを確認する。がん細胞の増殖および転移を抑制することを目的とする。その結果、がん細胞の増殖および転移を抑制することを実証し、がん治療の新たな戦略になるための理論的基盤の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会への参加を見送ったこともあり、これらに充当する予定だった分が未使用になってしまった。
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