研究課題/領域番号 |
21K06606
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
鳥羽 裕恵 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90351270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エリスロポエチン / 動脈硬化 / ドラッグ・リポジショニング / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
12%スクロース水を飲料水として10週間投与することでインスリン抵抗性モデルラットを作製した。経口糖負荷試験とHOMA-IRの測定から、耐糖能異常が発症していることを確認した。研究代表者がこれまでに、エリスロポエチンの腎性貧血治療薬の枠を超えた腎保護薬、血管保護薬としての有用性について報告した過去の研究に基づき、造血を呈さなかった150 U/kgのエリスロポエチンをスクロース負荷開始時から週3回、皮下投与した。これまでの部分腎摘慢性腎臓病モデルラットやストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットを用いた検討と異なり、エリスロポエチン投与によりヘマトクリット値と血圧が上昇した。エリスロポエチン投与群では血圧上昇が原因と考えられる大動脈内皮細胞機能(フェニレフリン前収縮下のアセチルコリンによる弛緩反応)と尿蛋白が悪化したが、耐糖能異常は改善を認めた。 これらの検討では血圧上昇がエリスロポエチン投与開始から4週以降で顕著に認められたため、エリスロポエチンの投与期間を最後の4週間とし、投与量も半減し(75 U/kg)、再検討を行った。依然、ヘマトクリット値と血圧の上昇を認めたが、耐糖能異常は改善し、尿蛋白と大動脈内皮機能の悪化を認めなかった。また、大動脈外膜層における浸潤マクロファージ数、腎髄質における尿細管間質の線維化を軽減する傾向が認められた。これらの結果から、エリスロポエチンはスクロース負荷インスリン抵抗性モデルラットの耐糖能異常を改善するが、造血に起因する血圧上昇により大動脈内皮機能障害や尿蛋白の改善効果が相殺されてしまった可能性が考えられる。 今後は75 U/kg、4週間のエリスロポエチンを投与した群におけるさらなる検討を進めるとともに、さらに投与量を減らし、血圧上昇を伴わない量での検討を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の過去の報告を参考に、部分腎摘術により作製した慢性腎臓病モデルやストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットの血管障害を、造血を伴わずに改善作用を発揮したエリスロポエチンの投与量を採用したが、予想に反し、ヘマトクリット値の上昇とともに、造血による副次的な作用を考えられる血圧上昇が引き起こされてしまった。高血圧は腎障害や血管障害の要因であるため、エリスロポエチンによる造血薬の枠を超えた腎保護作用、血管保護作用の検討に適切な投与量の再設定が必要となったぶん、当初の計画よりもやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
12%スクロース水負荷により作製したインスリン抵抗性モデルラットを用いた検討を引き続き行う。当初の投与量、投与期間から減量、短縮した条件である、75U/kgの用量で4週間、エリスロポエチンを投与した際にもヘマトクリット値と血圧の上昇を認めたが、血圧上昇にも関わらず、耐糖能異常を改善し、尿蛋白や大動脈内皮機能の悪化を認めず、組織学的な評価では改善傾向を確認できたためである。今後はさらに造血を呈さない投与条件を再検討すると同時に、すでに収集済みであるサンプルを用いて、検討を進め、肝臓、骨格筋、血管、腎臓におけるインスリンシグナル経路に対するエリスロポエチンの効果を解明していく。エリスロポエチンの投与条件が決定次第、スクロース負荷以外の方法で作製したインスリン抵抗性モデル動物を用いた検討や、インスリン抵抗性が病態の根底に存在している病態モデルについても追加検討し、本課題の目的達成を推進していく方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
造血と高血圧を引き起こさないエリスロポエチンの投与条件を他の病態モデル動物を用いた研究代表者の過去の報告のなかで検討済みであったため、本研究においても同様の条件を採用し検討を開始した。しかし、ヘマトクリット値と血圧がともに上昇したため、当該年度は薬物投与条件の再設定を中心とした検討が中心となり、費用のかかる併用薬、調製食やアッセイに必要なキット、消耗品、試薬の購入が遅れていることが次年度使用額が生じた理由である。投与条件の再設定は進行中であり、確定出来次第使用する計画であるとともに、投与条件設定に伴い、当初の計画よりも作製・保存すべきサンプル数が多いため、保存に必要なディープフリーザを購入予定である。これまで作製した臓器や血液、尿サンプルは随時保存しているため、当初2022年度に予定していた検討も同時に進行する計画である。
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