片腎摘出術から1週間の回復期の後、12パーセントスクロース水を飲料水として10週間投与することでインスリン抵抗性モデルラットを作製し、検討に用いた。HOMAーIRの測定から、耐糖能異常が発症することと、エリスロポエチン(75 U/kg)はこれを改善することを前年次までに確認しているが、サンプル数が十分ではなかった。最終年度はサンプル数を増やして確認した。また、前年度はエリスロポエチンの投与期間を最後の4週間とし、投与量を初年度よりさらに半減した条件(37.5 U/kg)での再検討を行ったが、効果が不十分であったため、75Uでの検討を継続した。エリスロポエチン投与は血圧を上昇する傾向にあったものの有意ではなく、内皮依存性弛緩反応と大動脈外膜層における浸潤マクロファージ数を改善する傾向を認め、腎髄質における尿細管間質の線維化を軽減する傾向が認められた。また、エリスロポエチンによる耐糖能改善機序を検討すべく、PI3K/Akt経路に着目した。肝臓におけるAkt経路の活性化をウェスタンブロット法でリン酸化Aktの発現から評価したが、全群に有意差を認めなかった。一方、エリスロポエチン受容体刺激の下流で活性化される別の経路を検討した。STAT経路の活性化が認められ、PI3K/Akt経路よりも、JAK/STAT経路がエリスロポエチンによるインスリン抵抗性改善作用に重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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