近年,欧米化した食生活やライフスタイルの変化に伴って生じる慢性炎症が,生活習慣病の発症や重症化に大きく関与していることが明らかにされつつある。しかし,慢性炎症の発生機序や制御法の詳細については未だに不明な点が多く残されている。これまでの研究で,AGEsを特異リガンドとしたアフィニティ担体を用いてAGEs親和性を持つ生体内因子を探索したところ,リボソーム構成因子(RPs)が高い結合親和性を示すことが判明した。その後の解析で,RPL9が敗血症モデルの血清中に出現してくること,AGEsのみならず代表的DAMPsであるHMGB1とも直接的に結合することが明らかとなった。更に,マクロファージ系細胞を用いた機能解析の結果,RPL9はDAMPsとしての作用は示さなかったものの,その一方でLPS+HMGB1共刺激誘性TNF-a 発現亢進を有意に抑制することを見出した。本研究において,RPS5もRPL9と同様にTNF-a発現応答を抑制することを見出した。RPL9とRPS5は,共にカチオン性タンパク質としての共通点を持ち,カチオン性人工ポリペプチドであるポリ-L-リジンやRPL9のカチオン領域由来の合成ペプチドもTNF-a発現応答を抑制した。一方,アニオン性RPsは LPS+HMGB1共刺激誘導性TNF-a発現応答の抑制効果を示さなかった。また,カチオン性RPs(RPL9やRPS5)によるTNF-a発現応答抑制作用は,AGEsの共存によって消失することも見出された。これらの結果から,カチオン性リボソーム構成分子(RPL9やRPS5)は,LPS+HMGB1共刺激誘導性炎症応答に対して抑制的役割を担っていること,AGEs蓄積が有意な病態(糖尿病など)では,この抑制作用が消失して炎症応答の増悪化に繋がっていることが示唆された。
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