研究課題/領域番号 |
21K06664
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
川上 純一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (50272539)
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研究分担者 |
内藤 隆文 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 教授 (80422749)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オピオイド誘発性便秘 / がん性疼痛緩和 / 薬物動態 / オピオイド / 薬物代謝酵素 / 薬物輸送担体 / がん悪液質 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究では、がん患者を対象にナルデメジンの体内動態、オピオイド誘発性便秘に対する抗便秘効果、有害作用および忍容性の個人差について、がんの病態進行に伴う生理学的変化や薬物代謝酵素や薬物輸送担体の遺伝子多型に着目し、悪液質の進行度や炎症性サイトカインの血中濃度を指標にオピオイド系鎮痛薬の臨床効果に及ぼす影響を含めて解析を行う。以下、2021年度における研究の実施状況および研究成果を記載する。 臨床試験については、浜松医科大学の臨床研究倫理委員会の承認を受け、UMIN臨床試験システムに登録されている。併用されるオピオイド鎮痛薬は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォンおよびフェンタニルとし、ナルデメジン投与5日目以降の定常状態において、投与後24時間目に採血を行った。現在、目標とする患者数の集積に向けて、患者登録、情報および検体の収集を実施している。2022年3月末の時点で、42名の患者から同意を得られ、検体を収集している。 ナルデメジンの血中濃度については、血漿試料の前処理に有機溶剤による除タンパク法を用いた簡便なLC-MS/MS法による定量法を確立した。この方法では、ヒトでの投与量0.2 mg/日でも定量(検量線範囲 0.125-5 ng/mL、定量下限 0.125 ng/mL)を可能とした。本測定法に関しては、米国FDAの生体試料分析のガイダンスに沿ってバリデーションを実施した。 評価項目については、悪液質の進行度を炎症度分類や症状分類を用いて評価可能なことの検証を行った。また、血中サイトカインについては、測定項目が多いことから、施設内におけるマルチプレックス測定を検討している。遺伝子多型解析については、ターゲット遺伝子を絞り、TaqManプローブ法を用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試験の倫理審査申請を行い、UMIN臨床試験システムに登録した。患者登録、患者情報および検体の収集を開始した。加えて、ナルデメジンの血中濃度測定法も確立し、おおむね順調に研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に開始した臨床試験の患者登録とともに、ナルデメジンの薬物動態解析、悪液質の進行度の評価および患者情報の収集を継続する。さらに薬物代謝酵素および薬物輸送担体の遺伝子型や炎症性サイトカインの評価とともに、薬物代謝酵素の活性を反映する内因性マーカーの定量を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: ナルデメジンの標準試薬に関しては、他財源より購入したため、研究開始のための消耗品の購入費用が予想していたよりも安価であった。血漿中濃度測定の前処理として、固相抽出を用いなかったため、それに関連する消耗品の購入費用が少なく済んだ。 次年度の研究費の使用計画: 2022年度の研究費については、前年度から開始した薬物動態の評価に必要な消耗品にかかる費用とともに、、炎症性サイトカインの評価、薬物代謝酵素や薬物輸送担体の遺伝子解析や薬物代謝酵素の活性を反映する内因性マーカーの定量に関連した消耗品、情報収集のための学会参加、学内共同機器の使用料に研究費を使用する。
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