研究実績の概要 |
本研究では、透析回路モデルに抗MRSA薬の溶液を循環させて含有率の変化から、AN69ST膜hemofilter(以下、HF)への吸着の影響について検討した。 始めに、基準となるstandard-Ⅰ, Ⅱについて含有率の変動は、分子量に関係なく概ね一定で緩やかな低下となった。本研究は、限外濾過による影響を除外していることから、AN69ST膜に吸着しないstandard-Ⅰ, Ⅱの含有率の低下は、拡散による影響と判断できる。よって、standard-Ⅰ, Ⅱと同様の変動を認めた薬剤は拡散のみの影響であり、異なる変動を認めた薬剤は吸着による影響が加わったと推察された。各薬剤の含有率の変動は、LZDはstandard-Ⅰ, Ⅱと同様だったが、ABK、TEIC、DAP、VCMは開始直後から明らかな低下を認めていた。 次に、各薬剤のCLを確認すると、LZDを除くABK、TEIC、DAP、VCMのCLが開始5分で増大していた。しかし、60分には全ての薬剤がstandard-Ⅰ, Ⅱと同じレベルまで減少した。千野らは、AN69ST-CHDFを施行中の患者に対して、IL-6の体外循環クリアランスは開始15分後が最も高く、1時間後には著しく低下したと報告している。これはAN69ST膜HFへの吸着が、開始後短時間で発揮されていることを意味している。 以上のことから、AN69ST膜HFへの各薬剤の吸着は、LZD を除くABK、TEIC、DAP、VCMが影響を受けると示唆された。 また、CLから各薬剤のAN69ST膜HFへの吸着度合を比較したところ、ABKが最も吸着されやすく、次いでTEIC、そしてDAPとVCMの順となった。これは、以前我々が行ったAN69ST膜への吸着度合と概ね同様であった。このことから、中空糸膜を用いた検討結果も、HFへの吸着の影響を予測するに有用であったと思われた。
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