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2021 年度 実施状況報告書

I型CRISPRを利用した新規エピゲノム型トリソミックレスキュー誘導法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K06835
研究機関三重大学

研究代表者

橋詰 令太郎  三重大学, 医学系研究科, 講師 (50456662)

研究分担者 河野 光雄  三重大学, 医学系研究科, 講師 (00234097)
脇田 幸子  三重大学, 医学系研究科, 技術員 (20782981)
倉橋 浩樹  藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (30243215)
北畠 康司  大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80506494)
宮川 世志幸  日本医科大学, 医学部, 講師 (90415604)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード染色体消去 / CRISPR/Cas / トリソミー / Down症候群 / iPS細胞
研究実績の概要

本課題は、Down症候群などの異数性染色体異常に対する、染色体消去技術の新規開発を試みるものである。我々研究グループはこれまで、アレル特異的なCRISPR/Cas9の認識配列リストを作成するための実験的なhaplotype phasing法を開発し、トリソミー21のiPS細胞を用いたin vitro実験系において、CRISPR/Cas9による21番染色体単一アレルに対する染色体切断が、標的染色体の細胞からの排除を誘導する知見を得ている。さらに、アレル特異的な切断方法はアレル非特異的な切断方法と比して染色体消去率が高いこと、切断箇所数と染色体除去率には正の相関があること、POLQおよびLIG4といった非相同末端結合(NHEJ)等の遺伝子ノックダウンが染色体除去率の上昇に貢献することを見出している。しかしながら一方で、これらCas9による物理的な染色体切断は、予期せぬ染色体の構造変異を含むゲノム改変のリスクを内包している。
そこで我々は、単一染色体アレル特異的な方法で、II型CRISPR-CasシステムであるCas9とともにI型CRISPRであるCas3システム等を用いた、ゲノム改変を極力抑えたあるいは行わない方法の開発を目指している。II型CRISPRのCas9が1ヶ所のDNA切断を行うのに対し、I型CRISPRであるCas3は、リール状にDNAをたぐり寄せるかたちでDNA上を移動しつつ、シュレッダーのように約100kbに及ぶ長鎖DNAを一方向性に分解することを特徴としている。本研究では、CRISPR/Cas9で得られている知見・理解を基盤とし、ゲノム改変リスクを最少化する目的でペリセントロメア領域に対する染色体分解や、標的染色体へのエピゲノム修飾によるゲノム改変フリーの染色体消去をCRISPR/Cas3を含めて試みる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

I型CRISPRによる染色体操作に先立って、CRISPR/Cas9の切断箇所として、21番染色体の種々の部位の組み合わせを複数選択し、切断箇所による染色体除去率への影響を検索した。すなわち、セントロメアの前後、サブテロメア領域等、染色体の領域ごとに切断部位を選択し、複数の組み合わせの標的部位を認識するCRISPR/Cas9発現ベクターを作製し、これらをトリソミー21-iPS細胞へ導入し、一定期間後に核型をFISH法にて評価検討した。しかしながら、染色体除去率に合理的な法則は確認できなかった。核内におけるゲノム標的部位のクロマチン構造により、たとえばユークロマチンと異なりヘテロクロマチンではCas9のゲノムへのアクセスが制限されていることなどにより、染色体切断そのものの効率低下を招来し、結果、予測した結果が得られなかったと推認された。これら結果より、CRISPR/Casによる染色体切断のモニター、すなわちDNA double strand break reporterを、短縮型TP53BP1-蛍光タンパク質を発現させ染色体損傷部位に集積させることにより可視化する評価系を構築した。
CRISPR/Cas3システム(E. coli由来)に関しては、大腸菌の各種Cascadeタンパク質、Cas3タンパク質、およびcrRNAのいずれをもヒトコドン最適化のもと発現するmulti-cistronic発現ベクターを作製し、直接シークエンス法にて配列の確認を行った。また、trisomy21ヒトiPS細胞から各21番染色体を排除した誘導型disomy細胞株の全ゲノムNGS結果をもとに、CRISPR/Cas3システムが認識する配列をアレル特異的に抽出した。

今後の研究の推進方策

セントロメア配列は相同染色体間で差異が少なく、単一染色体アレル特異的なCRISPRによるアプローチが困難とされる。他方、ペリセントロメアは、バリアントが豊富で、CRISPRによる染色体別の認識が比較的可能である。本計画では、エフェクター分子とヌクレアーゼ活性を欠いたdCas9ないしはdCas3とを組合せ、単一21番染色体ペリセントロメアの非コード領域に対しエピゲノム修飾を試みる。ペリセントロメア機能は、ヒストンメチル化とDNAメチル化により維持されていることから、エフェクターとして、H3K9脱メチル化酵素や、DNA脱メチル化酵素等を用いることを予定している。これにより標的染色体のみペリセントロメア機能を失わせ、ゲノム改変を伴わずに染色体の排除をねらう。染色体消去率はこれまでと同様に、FISH法、G分染法、クローニング後のSTR解析等により多面的に評価される。
染色体が主核からあるいは細胞から削除される過程を理解するためには、生細胞を用いたlive cell imagingによる標的染色体の可視化が有効である。この目的のため、標的染色体にTetオペレーターアレイ配列ないしはlacオペレーター配列を挿入した評価用のゲノム編集トリソミー21細胞を作成予定である。TetR-蛍光タンパク質-NLSないしはlacI-蛍光タンパク質-NLSを別途発現させることにより、当該部位を可視化し、標的染色体を生細胞にて追跡し、これにより学術的な理解を深めることが可能となる。

次年度使用額が生じた理由

前年度にて予測した、物品費および次世代シークエンサー(NGS)を用いた解析(その他として計上)において、実際の支出よりも予測額が多かったため、次年度使用額が生じた。殊に、NGSを用いた解析が想定よりも実際には少なく、次年度使用額の発生に直結している。今後も、実際の実験の内容や進行に伴い、適宜内訳を調整して、研究経費を最大限有効に活用する予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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