研究課題
通常の大腸腺癌は、正常上皮から腺腫と経て表層癌となり、浸潤能を獲得して浸潤癌へと進展する。われわれはこれまでに、大腸癌発症に関わるMAPキナーゼパスウェイを抑制する分子であるDUSP4の発現が、表層癌では亢進していること、逆に浸潤癌では低下していることを見出した。さらに、DUSP4低発現細胞株にDUSP4を強制発現すると、MAPキナーゼパスウェイの不活化に伴って増殖および浸潤が有意に抑制されることを示し、DUSP4が大腸がん細胞の増殖・浸潤に関わるがん抑制遺伝子であると報告した。一方、大腸腺癌の亜型である大腸粘液癌では、表層部から浸潤部に至るすべての粘液癌細胞でDUSP4の高レベルの発現が維持されており、通常の大腸腺癌における機能とは異なることが示唆された。そこで、DUSP4を高発現する大腸細胞株において、DUSP4の発現を抑制すると、p53の蓄積とp53下流のシグナルパスウェイが活性化され、細胞周期の停止とアポトーシスの誘導に伴って細胞増殖能が低下することを報告している。これらの知見は、大腸癌の一部、とくに大腸粘液癌においては、恒常的に発現するDUSP4ががん細胞の生存能と増殖能を亢進して、がん遺伝子として機能していることを示唆している。さらに、大腸癌に対する新規分子標的としてのDUSP4の有望性についても期待される。本研究では、大腸粘液癌の組織培養系を確立することにより、粘液癌で高発現しているDUSP4の機能的意義を明らかにする。さらに、粘液癌で活性化しているシグナルパスウェイを同定して、治療標的としての可能性を検証する。
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