研究課題/領域番号 |
21K06941
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
畠山 金太 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (60325735)
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研究分担者 |
雨宮 妃 昭和大学, 医学部, 助教 (00769854)
細田 洋司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (40359807)
泉 知里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70768100)
寺田 智代子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80878330)
大林 千穂 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90223940)
尾上 健児 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90510173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Onco-cardiology / Histopathology / Immunohistochemistry / p53 / Cancer chemotherapy / H3K27ac / p300 / HAT1 |
研究実績の概要 |
【背景および目的】抗ガン剤治療による心毒性の病理像を検討し抗ガン剤治療後心機能障害(CTRCD)の機序解明を目的とする。 【材料および方法】CTRCDを発症したガン患者13例の心筋生検とガン患者解剖例35例の心筋組織を用いて、コントロール(心筋生検10例、解剖例9例)の心筋組織との比較を行った。検討項目は、形態像(間質線維化、置換性線維化、心筋細胞核異型、心筋細胞粗鬆化、空胞化、配列乱れ、先細り変性)と免疫染色(p53, H3K27ac, p300, HAT1, MEF2A)である。形態像は4段階分類し、免疫染色は染色性強度と陽性細胞率からH-scoreを算出して定量化した。さらに臨床歴(既往歴と薬剤歴)からCardiotoxicity Risk Score(CRS)を算出して形態像と免疫染色の評価と比較し臨床的意義を検討した。 【結果】CTRCD群ではコントロールに比し全例において形態像の高度変化を認めた。免疫染色ではp53発現がCTRCD群で優位に高値でありH3K27acと相関していた。また長期経過群(抗がん剤投与後4.2年以上で発症)においては、心筋細胞の形態像変化とp53発現が相関しており、さらにCRSとp53も優位に関連していた。CTRCDに対する治療への反応性(左室EFの改善)に関しては長期群に比し短期CTRCD群(同4.2年以下で発症)において良好であった。剖検例に関する検討においてもp53とH3K27acの関連性については同様であり、抗がん剤投与後に心機能障害のみられた群は優位にp53とH3K27acの発現が上昇しており両者の有意な相関もみられた。剖検例でのp300, HAT1発現増加も確認した。 【結語】抗がん剤投与により生じる心毒性にエピジェネティックな遺伝子修飾が深く関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染の蔓延により共同研究者との連携ができなかったことが最大の理由である。しかし、5月以降に連携を再開できる目途が立ち、研究の前進が予測される。
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今後の研究の推進方策 |
アドリアマイシン心筋症の心移植検体(レシピエント心)や抗がん剤治療後心機能障害で死亡した剖検例を用いてCHIP-seqを行い、H3K27acにより発現変化する蛋白質を検討する予定である。さらにp300とHAT1の変化がみられたことより、これらの蛋白質の免疫染色による発現変化の詳細について検討する。さらに大阪大学との共同研究によりiPS心筋細胞を用いた培養実験まで行いたい。すなわち、抗がん剤投与によりiPS心筋細胞で発現変化する蛋白質について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染の蔓延により共同研究者との連携ができなかったことが最大の理由である。しかし、5月以降に連携を再開できる目途が立ち、研究の前進が予測される。
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