研究実績の概要 |
大腸癌線維性癌間質反応 Desmoplastic reaction (DR),は、形態学的にMature、Intermediate, Immatureに分類され、悪性化の指標として注目されており、その大部分はがん関連線維芽細胞(CAFs)から構成されている。 Immature型大腸癌のCAFsは活性型ADAM9sを高発現して癌細胞の増殖・浸潤能を亢進することから、CAFsの作用はMMPs/ADAMsの内因性インヒビターであるTIMPs発現量との不均衡のもとに作用していることが推定される。 最終年度は、大腸癌手術検体よりDR分類別にCAFsを培養し、 TIMP1-4の発現量をイムノブロット法で解析した結果、 TIMP2レベルは、immature DR由来CAFs (CAFsimmature)(1.00±0.89)に比べ、mature DR由来 CAFs (CAFsmature ) (6.10±2.97;平均±SD)で有意に高値であった(P=0.0168)。また、蛍光二重免疫染色によりTIMP-2はCAFsmatureから分泌されることが分かった。スクラッチアッセイと細胞内シグナル伝達解析の結果、CAFsmatureの培養上清を加えた大腸癌細胞株(SW480,HCT116)は遊走能が抑制され、細胞内ERK1/2リン酸化も低下した。さらにsiRNAを用いてCAFsmatureでのTIMP-2を発現抑制すると、その培養上清による癌細胞の運動能が亢進し、IL-6の分泌量も促進した。現在、ex vivo培養系でのリコンビナントTIMP2添加により、大腸癌間質のImmature型→Mature型への形態シフトについて検討を行っている。
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