研究実績の概要 |
サルモネラは細胞内寄生菌の一種であり、宿主マクロファージ内にサルモネラ含有液胞(SCV)と呼ばれる特別なニッチを形成してその中で増殖する。しかしある段階に至ると、サルモネラは3型分泌装置(T3SS-2)と呼ばれる病原因子によりSCVに孔を開け、マクロファージの細胞死を誘導し、補体経路を活性することで好中球をリクルートする。そして、リクルートされた好中球は「エフェロサイトーシス」の作用により、サルモネラごと死んだマクロファージを取り込む。この取り込まれたマクロファージのデブリは、好中球の産生する活性酸素種を中和して、好中球内でのサルモネラの生存性を高めることを明らかにした。ここまでの成果は、本助成期間中に国際誌(Cell Host & Microbe, 2022)や学会等で発表した。 さらに、T3SS-2から30種以上のエフェクターが分泌されるが、スクリーニングの結果、エフェロサイトーシスの誘導には”エフェクターV(仮称)”が強く関与することを明らかにした。また報告されているエフェクターVの酵素活性が、その誘導活性に重要であることをアミノ酸置換した変異体の導入により確認できた。またマウス感染実験モデルにおいて、エフェクターVがサルモネラの全身感染性に重要であること、また感染マウス内の脾臓好中球サブセットを感染に有利なものに誘導することが分かった。これらのことから、サルモネラはT3SS-2およびエフェクターVを用い、エフェロサイトーシスの誘導および好中球機能を撹乱することで、全身感染性を高めている可能性が示唆された。
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